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私はもう一度黒尾を一瞥すると、やっぱり目が合ったので今度は睨みつける。
彼は相変わらず楽しそうに笑っていた。
ところで、と黒尾が笑いながら私の顔を覗き込んだ。
「あれ、本気にしていいの？」
「……なにが？」
「きのうの、」
こくはく、と囁いた黒尾の熱っぽい声が耳を掠め、私は思わず彼から距離を取った。
耳が、熱い。
なんなんだ、なんなんだ一体、と頭の中でぐるぐる回る。
頬に血が上るのが分かって、私は慌てて頬を覆った。
黒尾はぐっと近づけていた顔を離して、頬杖をついて、意地悪く笑ったまま、伺うようにこちらを見た。
どきり、とまた心臓が正直に音を立ててしまう。
悔しい、悔しい、早く殺してしまいたい。
そう思うのに、なぜ殺そうとはしないのか。
「おれのこと、すきなの？」
黒尾はにこにこと笑みを崩さずに、私の答えを待っている。
私はどうしてこんな羞恥プレイみたいなことをさせられているのだろう。
何度も何度も傷つけなくたっていいじゃないか。
……本当に？ 傷つけるつもりなの？
しかし、黒尾が昨日の告白についてなにも触れないことを不満に思っていた私がいたのもまた事実で、私の心臓は、黒尾があの夜の告白を覚えていてくれた、と歓喜に震えたのも本当だった。
「っだから、きのうも言った……っ」
「あー、うん、言ってたけどね。あれはAチャン、酔ってたから」
は？ 呆けた声の私に、黒尾は今度こそ笑い声をあげた。
周囲の視線がこちらをちらりと伺うのが雰囲気でわかる。
黒尾は周りをちょっと見て、堪えるように笑い始めた。
「おれ、酔っ払いは信用してねーの」
「……は？」
「あれ？ わかってない？」
「全ッ然、わかんない」
「うん、だからね、酔ってない時に告白して欲しかったから、Aチャンに」
だから聞いてみた、と黒尾は笑う。
私はますます混乱するしかなかった。
それは、つまり、どういうことか、逐一噛み砕いて説明して欲しいところだけれど、とりあえず目の前のこの男は随分性格が悪いらしい。
憎たらしいぐらい笑顔の黒尾のその横っ面を引っ叩いてやりたいけれど、昨夜の真相を聞く方が私にとっては必要だった。
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つばき - 川西のお話、鳥肌が立ちました。陰のある恋をしてほしいっていうの、同意します…！ (2021年2月14日 10時) (
レス) id: f1e42d3762 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - リムさん» ありがとうございます！ 頑張ります (2019年12月30日 22時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
リム - 赤葦の物語とっても切なくて涙が止まりません・・・泣 これからも頑張ってください! (2019年12月22日 2時) (レス) id: 7cc2098249 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 天祢さん» そう言っていただけてうれしいです！個人的にも川西くんのお話が好きなので、刺さってくださる方がいて良かったなあと思います。更新を楽しみにして頂けるとうれしいです。コメントありがとうございました！ (2019年12月14日 15時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
天祢 - 読ませていただきました!勿論全部のお話が素晴らしかったのですが、元々最推しなのもあって川西くんのお話が特に良かったです。深いなぁ…と思いました。更新頑張って下さい!楽しみにしています(^-^) (2019年12月13日 21時) (レス) id: dfbff6b887 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桔梗 | 作成日時：2019年11月16日 13時
