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今日はなんでもないただの飲み会だった。
平日のド真ん中、翌日のことを何にも考えていない、部の飲み会。
この間のリーグ大会で好成績で、まあちょっと飲みにでも行かない？ ぐらいの、そんなノリ。
程よく酔って程よく楽しんだ飲み会の後、どうやら酔いが思いのほか回っていたらしく覚束無い足取りの私を、ご丁寧に送ってくれると申し出たのが、黒尾鉄朗、私の片想い相手だった。
だから私を家に送り届けてくれた黒尾に向かって、私は「家に寄っていかない？ お茶くらいは出すから」と一言声をかけたのだ。
渾身の誘い文句だった。
深夜に招くのは貴方だからだよって、貴方だけだよって、そういう気持ちを込めて。
お酒も入っていて、気分が良くて、ちょっと気が大きくなった。
黒尾が眉を顰めて、早く部屋入って寝ろよ、とだけ私に告げた。
私は「ねえ、寄っていってよ。おねがい」と散々みっともなく縋り付いて、駄々を捏ねた。
縋り付く私に驚いたような顔をした黒尾の顔が、もう一度顰めっ面になって、やんわりと私の腕を解いた。
黒尾は意にも介さなかった。
だから、黒尾がちっとも振り向いてくれないのが悔しくて悔しくて、私は思わず口走ってしまったのだ。
「すきなの」
「え？」
「すきなの」
黒尾は顰めていた顔を今度は困った風にして、縋り付く私の腕をやんわりと解いた。
そして、「それじゃ、おやすみ。また明日な」の一言である。
そのショックでもうすっかり酔いが醒めてしまった。
我に返って一番初めにしたことは自分の態度を猛省で、そしてその後は、それはそれはもう傷ついた。
すごく好きだった。
バレーをする姿も、私をからかって笑う顔も、何もかもが、好きだった。
そうして多分、黒尾も好きでいてくれるんじゃないか、と自惚れさえしていた。
しかしそれはどうやら私の勘違いであったらしい。
恥ずかしくて辛くて、傷ついているのに泣くにも泣けなかった。
あまりにも自分が惨めだった。
そうして私は、何が何だかよくわからないまま部屋に戻って、化粧を落として、シャワーを浴びて、泥のように眠った。
何も考えたくなかった……もしくは、やっぱり酔いは醒めていなくて、何も考えられないくらい酔っていたのかもしれない。
ああ、会いたくないなあ。
私、黒尾と会って、どんな顔すればいいんだろう。
あんなこと、言わなきゃよかった。
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つばき - 川西のお話、鳥肌が立ちました。陰のある恋をしてほしいっていうの、同意します…！ (2021年2月14日 10時) (
レス) id: f1e42d3762 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - リムさん» ありがとうございます！ 頑張ります (2019年12月30日 22時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
リム - 赤葦の物語とっても切なくて涙が止まりません・・・泣 これからも頑張ってください! (2019年12月22日 2時) (レス) id: 7cc2098249 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 天祢さん» そう言っていただけてうれしいです！個人的にも川西くんのお話が好きなので、刺さってくださる方がいて良かったなあと思います。更新を楽しみにして頂けるとうれしいです。コメントありがとうございました！ (2019年12月14日 15時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
天祢 - 読ませていただきました!勿論全部のお話が素晴らしかったのですが、元々最推しなのもあって川西くんのお話が特に良かったです。深いなぁ…と思いました。更新頑張って下さい!楽しみにしています(^-^) (2019年12月13日 21時) (レス) id: dfbff6b887 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桔梗 | 作成日時：2019年11月16日 13時
