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馬鹿馬鹿しいと人は笑う。
倫太郎がいないと生きていけないだなんてそんな馬鹿なことを言うなと周りは言う。
そんなことはない、お前はただ倫太郎に甘えているだけで一人で生きていけるはずだと言う。
でも私が一人で生きていけるかいけないかは私が決めることだ。
私は一人でなんて生きていけない。
私は私の人生に倫太郎がいないと生きていこうだなんて思えない。
片時だって離れたくない。
面倒だと思われてもいい。
迷惑だと疎まれてもいい。
それでも倫太郎が会える距離に、傍に居てくれるならなんでもいい。
しゃくりあげる私の横に、倫太郎がしゃがみこんだ気配がした。
そろりと顔を上げると、倫太郎は無表情でこちらを向いたままそこにいる。
倫太郎の顔を見たらどんどん涙は溢れて、そこで初めて倫太郎が眉根を寄せた。
「は? なんでまたそんな泣いてるの」
「だって、りんたろうに会えなくなるんでしょう、」
「なんでそうなるの」
「だって倫太郎が兵庫に行くって言ったから」
「俺一人で行くなんて言ってないけど」
びっくりしすぎて呼吸が止まった。
倫太郎は顔を顰めて「息してる? 過呼吸とかやめてよ」と言うので頑張って息をした。
大丈夫、呼吸出来てる。
酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出して、流れ切らなかった涙がぽろりと落ちた。
「なに、どういうこと、りんたろ、ねえ、それだけじゃわかんないよ」
「察しろよ」
「むりだよ」
「なんで」
至極面倒くさそうな顔をする倫太郎に、私は縋り付いた。
迷惑そうに「うわっ」と言われたけれど、倫太郎が本当は嫌じゃないことを私は知っている。
その証拠に、倫太郎は私を振り払うこともせずただ支えてくれている。
「倫太郎の言葉で聞きたいの」
「面倒くさい」
「いいから!!」
倫太郎は面倒くさそうな顔をしているけれど、私に折れる気がないと知ったのか渋々口を開いた。
「Aも一緒に来るんじゃないの」
「……一緒に行っていいの?」
それは私が期待していた以上の言葉だった。
倫太郎は恥ずかしげもなくそう言い放ってくれたけれど、今度は私が戸惑った。
本当にいいのかな。
私は躊躇わずに倫太郎の言葉を素直に受け取っていいのかな。
何となくそんな風に思ってしまったから出てきた言葉だった。
泣きじゃくって乱れた私の髪に、倫太郎の右腕が伸びてきてそっと払った。
優しい、彼はいつだって優しかった。
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つばき - 川西のお話、鳥肌が立ちました。陰のある恋をしてほしいっていうの、同意します…! (2021年2月14日 10時) (レス) id: f1e42d3762 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - リムさん» ありがとうございます! 頑張ります (2019年12月30日 22時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
リム - 赤葦の物語とっても切なくて涙が止まりません・・・泣 これからも頑張ってください! (2019年12月22日 2時) (レス) id: 7cc2098249 (このIDを非表示/違反報告)
桔梗(プロフ) - 天祢さん» そう言っていただけてうれしいです!個人的にも川西くんのお話が好きなので、刺さってくださる方がいて良かったなあと思います。更新を楽しみにして頂けるとうれしいです。コメントありがとうございました! (2019年12月14日 15時) (レス) id: b9479cbc1c (このIDを非表示/違反報告)
天祢 - 読ませていただきました!勿論全部のお話が素晴らしかったのですが、元々最推しなのもあって川西くんのお話が特に良かったです。深いなぁ…と思いました。更新頑張って下さい!楽しみにしています(^-^) (2019年12月13日 21時) (レス) id: dfbff6b887 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桔梗 | 作成日時:2019年11月16日 13時