潮騒～Sound of Waves～ 6 (ページ41)

今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:765,814 hit

249 襲われそうになったらページ41

・

・

にのくんの部屋から帰って、私はその勢いのまま何年かぶりに智の家へ行った。

本当かどうかわかんない話を間に受けて突然にのくんを殴ったことに腹が立ってたのと、智の怪我の様子も気になったから。

夜も更けていて智のおじさんもおばさんも家にいる時間だったし、あの日と同じようなことになる心配がないことも理由の一つだった。

・

今日のことを問い質してやろうと思って来たのに、何年かぶりの智の部屋は、まるでここだけ時間が止まったみたいに何も変わっていなくて笑う。

・

「…人の部屋に勝手に入ってきて何笑ってんだよ」

「だってここ中学生の時のままなんだもん。笑」

「いんだよ、これが落ち着くんだから」

「ねぇ、怪我大丈夫なの？」

・

私が来ても、ベッドにうつ伏せに寝転がったまま智は起き上がろうともしない。

私は部屋のドアを開けたまま智の机から椅子を引いてクルリと回すと、そこに腰掛けた。

・

「Aちゃん、久しぶりねぇ」

「おばさん、こんな時間にごめんね」

「そんなの気にしなくていいのよー。…あんた寝っ転がってないで起きなさいよ、せっかく久しぶりにAちゃんが来てくれたのに」

おばさんは智のジーンズのお尻をペシッと叩いて、机の上に紅茶のカップを二つ置く。

・

「ありがとう」

「ゆっくりしてってね。…あ、二宮くんは元気？」

「、あ、うん、元気」

「おばさんあの子好きなのよー。またいつでも泊まりに来てねって言っておいてね。アルバム他のも出てきたからって」

「アルバム？」

「そうなの、前に泊まりに来た時にアルバムが見たいって言ってね。すぐに出るのが少ししかなかったんだけどすごく喜んだから、あれから色々探したのよ」

「へぇ…うん、言っとく！」

「Aちゃんの写真も見てたわよ？高校の入学式の日のも。うちにあるAちゃんのはあれが最後だったから素っぴんのAちゃんが懐かしいって笑ってたわ」

「え？」

懐かしい？

「もういいから出てけって！」

智が起き上がって鬱陶しそうにそう言うと、おばさんはハイハイ、とお盆を持って立ち上がる。

・

・

「Aちゃん、智に襲われそうになったら大声で叫びなさいよ？すぐに助けてあげるから。笑」

「……あはは」

・

・

にこやかに笑うおばさんが部屋を出て行った後、智と私の間にビミョーな空気が漂った。