潮騒～Sound of Waves～ 3 (ページ8)

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90 無防備＊Nino＊ページ8

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微かに地面を踏みしめる音が聞こえたような気がして、ハッと我に返った。

Aの手首を掴んだままじっと耳を澄ます。

唇が離れても動かない俺を不審に思ったAが、何か言いかけてその唇を開きかけたから。

さっきまで俺が塞いでた、その小さな赤い唇を開きかけたから。

「シッ」

俺は慌ててAのそれを掌で覆って喋らせないようにした。

「…外に、誰かいる」

「え、」

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しばらく耳を澄ましてみて、気のせいだったことがわかる。

俺は安堵して汗で頬っぺたに張り付いたAの髪の一筋を、丁寧に指で剥がした。

何をするんだろうと不安に揺れるAの丸い目が、じっと俺を見る。

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つるつるの剥き卵みたいな上気したおでこも頬っぺたも。

シャワーを浴びたばかりだってわかる、まだ少し湿った髪も、そのシャンプーの匂いも。

清潔な肌に流れる汗だって、なんかもう…ヤバい。

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俺、全てにやられてる。

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暑くて頭がおかしくなりそうな、この狭い空間のせいだ。

こんな…俺じゃない他の男のことを、リーダーのことを好きな女にやられちまってるなんてさ。

きっとそうだ。

頭がイカレてなけりゃ、無理矢理キスなんて…

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こいつが抵抗しないから。

嫌だって、やめてくれって。

いつまでもこのふわふわした頬っぺたに触れ続ける俺の手を、払いのけようとしないから。

だから俺は…

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Aの両腕を掴んで引き寄せ、抱きしめた。

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「…や///」

「シッ」

「、…」

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も、ヤバい…

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こいつ、なんでこんなふわふわしてんのよ。

メイちゃんに借りた服がまたヤバい。

メイちゃんはさ、普段からいつもこんな感じだからもう慣れちゃってるっつーか。

だけどAはカジュアルなカッコしてることが多いからさ、こんなの着られるとハンパなく男の目を引くのよ。

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さっき、Aを心配してた奴らが周りに集まってきた時だってさ、女連中は大丈夫かって、その服可愛いねって笑ってたけど。

その後ろでさ、この透ける薄い布の下の、下着みたいなやつのはっきりと分かる胸の形とか。

ケツ見えんじゃねぇのってくらい短いショーパンから伸びた、やけに生々しい足とかさ。

男が見てないフリして、チラチラそわそわ見てたことにこいつは全く気付いてねぇし。

これまたすっぴんっつーのがまた煽るっつーか。

こんな無防備でどうすんのよ…

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って。矛盾したことしてんな、俺。