潮騒～Sound of Waves～ 3 (ページ5)

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87 ロケットページ5

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ああ、間違えた。

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隠れて五分も経たない内に、そう思った。

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みんなは、木でできた遊具がたくさんある公園の方に逃げて行った。

逃げ出すのが少し遅れてしまった私は、そっちに行くにはもう間に合わないと思って。

駐車場の隅っこに植えらけた木の陰にポツンとある、子供用の小さな滑り台の上に上がって、ロケットみたいなところに一人隠れたんたけど。

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ここは、暑過ぎる。

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金属でできた遊具は火傷しそうに熱くて、触らずじっと身を潜めているだけでも汗が噴き出してくる。

喉が渇いたな…

そう言えば朝食の時に一口お茶を飲んだだけで、シャワーを浴びた後何か飲もうと思いながら何も口にしてなかった。

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うぉー！という雄叫びの後、カーンと缶が蹴られる小気味いい音が聞こえた。

少しだけ顔を出して覗いてみると、両手をバンザイしながら満面の笑顔で走っていく相葉さんと、遠くで背中を向けて足で缶を転がす智が見える。

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ふふっ。

智、相葉さんに蹴られちゃったんだ。笑

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私はもう一度、滑り台のロケットの中に身を潜めた。

すると、全く足音なんて聞こえなかったのに、突然にのくんがロケットの中に滑り込んでくる。

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「おっ！！」

「！！！…びっくり、した…」

「ちょ、ここ見えるからさ、お前もーちょい奥に詰めてよ」

「あ、うん」

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って言われても。

元々ここは大人が一人、体育座りでいるだけですでにキツイ。

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にのくんに促されて私が気持ち奥に詰めると、にのくんは片膝を付いて背中を丸め、私の上でロケットに手を付く。

そして両手で自分の体を支えるように屈んだ。

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ここまで走ってきたのかな。

にのくんの顔が、私の斜め上にあるんだけど。

「……///」

近過ぎて顔が上げられなくて、私は膝を抱えた自分の手をずっと見ていた。

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ポツンと、一雫。

雨みたいに頬っぺたに落ちてきた、にのくんの汗。

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「あ、…ごめん。笑」

「ううん。笑」

思わず笑って私が顔を上げると、にのくんが親指でそれを拭い取った。

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「、……」

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…？

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汗は、もう拭い取れたはずなのに。

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にのくんの親指は離れていかなくて。

それどころか掌で私の頬っぺたに触れたまま、にのくんはただじっと私を見る。

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泣きたくなる。

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好き…

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にのくんの唇が、私の唇に、そっと触れた。