第五話 ページ6
夕飯の支度をしている間に、百鬼丸が帰ってきた。
その整った面には、妖退治に行った証に異色の血がついていた。
「…」
Aの血も、決して人間の血の色とは言えない。
(…私もいつか、百鬼丸に…)
そう思うことは少なくなかった。
だが、人間ではない以上、いつかは殺される。
ましてやこの時代、人同士で殺し合っているのだから尚更だ。
ただ、今のAを百鬼丸は殺そうとしない。
色が安全であるからだろうと、Aは思っていた。
百鬼丸には、生まれつき物の色が見える。
人や動物の大抵は白く見える。
安全である証拠だ。
しかし、妖は異なり、赤黒い血の色に見える。
その色は百鬼丸だけでなく、Aにも見えていた。
色だけの世界になってしまうと文字や模様は見えないが、Aの場合片目だけなのでその支障はなかった。
その証拠に、色が見える右目は真っ赤な血のような色だった。
寿海「A」
「っ、はい」
寿海「何か物思いに耽っているようだが…大丈夫か」
「いえ…問題ありません」
いつか百鬼丸に殺されるかも、など言えるはずがなかった。
夕飯が終わった後、寿海はAと百鬼丸を囲炉裏の前に座らせた。
寿海は二人の反対側に座る。
「…話とは？」
Aの問い出しに、寿海はゆっくりと頷いた。
寿海「…二人で、旅に出なさい」
旅、という単語に、Aの胸が脈打った。
寿海「私も、お前たちをずっと見ていられるわけではない。お前たちはこれから、強くなって生きていかなくてはならない。私がいては、足手まといになるからな」
突然のことに、Aは言葉が出なかった。
寿海「それに、百鬼丸の身体のこともある」
最近、百鬼丸の右脚が戻った。
聞けば、妖を倒した際に戻ったらしい。
つまり、妖を倒せば倒すほど百鬼丸の身体は元どおりになる。
寿海「A」
「…はい」
寿海に名を呼ばれ、顔を上げる。
寿海「お前は一番私の仕事を見てきた…もし百鬼丸の手や足に何かあれば、代わりに作ってやってくれないか」
「…わかりました」
Aの了承に、寿海が頷く。
寿海「明日の朝には出た方がいい。戦が近づいてこないうちに…もう寝なさい」
「はい…おやすみなさい」
立ち上がったAが「寝よう、百鬼丸」と声をかける。
百鬼丸も立ち上がり、Aの後についていく。
小さな二つの命火が、部屋奥の暗闇に消えていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 136人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
輪廻 - めっちゃ面白いです！(^ ^) 続きを楽しみにしてます！ これからも頑張ってください！ (2019年7月11日 12時) (
レス) id: bf927136c6 (このIDを非表示/違反報告)
響 - 何が総合２位wwオリフラ立てたからじゃん (2019年6月27日 20時) (レス) id: 50d994e323 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい。外されないなら違反報告します (2019年6月27日 18時) (レス) id: c56aad1eeb (このIDを非表示/違反報告)
姫鬼(プロフ) - siriusuさん» ありがとうございます、励みになります！！ (2019年4月15日 19時) (レス) id: 72603904b9 (このIDを非表示/違反報告)
siriusu(プロフ) - とても面白いです！続き凄く気になります！更新頑張って下さい！q(^-^q) (2019年4月3日 16時) (レス) id: ee4308919b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：姫鬼 | 作成日時：2019年2月17日 11時
