第二十八話 ページ34
ミオと名乗ったその少女は、古い寺で子供たちと暮らしているという。
戦で親を失った者同士で、協力して生きていると言っていた。
子供たちの中には、手足がない子供も何人かいた。
琵琶丸「ミオさんと言ったかい。悪いねぇ、私らまでお邪魔させてもらって」
ミオ「大丈夫、当分いてもらって構わないから」
そう言うと、ミオはどろろに布切れを差し出した。
ミオ「着物を解いたものだけど、綺麗だから使って」
どろろ「ああ、ありがと」
ミオ「それと」
ミオがAに視線を向ける。
ミオ「布団は隣の部屋にあるから、よかったらそこで寝て。あと…名前、教えてもらってもいい?」
「…A」
ミオ「A…Aね。ねえA、私あなたと仲良くなりたい。女の子同士、話もしてみたいの。同じくらいの歳の子なんて、この辺りにはいないから」
「…そう」
素っ気なく返してしまうのは、きっと人間でない証だ。
ミオ「あ、ごめんなさい、眠いよね。私ったら…」
竹坊「眠いのはミオ姉もだろ」
片腕のない男児が、ずかずかとやって来る。
竹坊「いつまでも起きてると身体もたねぇぞ。怪我人は俺が見っから…」
まるで母親のようにミオにあれこれ言う。
それを見たミオは笑いながら立ち上がった。
ミオ「分かった分かった。じゃあ、私は寝るから、何かあったらこの竹坊に聞いて」
ミオはひらひらと手を振ると、部屋の外へ出て行った。
「…」
床に仰向けで寝る百鬼丸の頬を撫でた。
ついこの間まであった固い触り心地はなく、すべすべと柔らかかった。
血の気のないAの手に、じんわりと温度が伝わってくる。
どろろ「A、寝なくていいのかよ」
どろろが芋粥をかき込みながら言う。
「眠くないんだ」
どろろ「その隈で言うことかよ」
「眠くないのに布団に入っても、寝れる訳ないだろ」
どろろ「まァ、そうかもしんねぇけど…それより最近、飯も全然食ってないよな。腹も減らないのか?」
どろろがAの分であった芋粥に手を伸ばす。
「ああ。言っただろ、私は人間とは違うと」
どろろ「どう違うんだよ?」
「…」
言葉が詰まる。
今ここで言っていいのか。
言うとしても、何と言えば良いのかがAには分からなかった。
どろろ「…A?」
「…いずれ話す」
どろろ「ふぅん…」
いずれと言っても、いつなのかは分からない。
足を伸ばして、後ろの壁にもたれかかる。
Aの瞼が重くなることはなかった。
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輪廻 - めっちゃ面白いです!(^ ^) 続きを楽しみにしてます! これからも頑張ってください! (2019年7月11日 12時) (レス) id: bf927136c6 (このIDを非表示/違反報告)
響 - 何が総合2位wwオリフラ立てたからじゃん (2019年6月27日 20時) (レス) id: 50d994e323 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい。外されないなら違反報告します (2019年6月27日 18時) (レス) id: c56aad1eeb (このIDを非表示/違反報告)
姫鬼(プロフ) - siriusuさん» ありがとうございます、励みになります!! (2019年4月15日 19時) (レス) id: 72603904b9 (このIDを非表示/違反報告)
siriusu(プロフ) - とても面白いです!続き凄く気になります!更新頑張って下さい!q(^-^q) (2019年4月3日 16時) (レス) id: ee4308919b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:姫鬼 | 作成日時:2019年2月17日 11時