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第二十話 ページ26

ポツッ ポツッ

「…あ」

Aの掌に、一粒の雫が落ちた。

どろろ「雨だ。兄貴、雨宿りしようぜ」

百鬼丸の手を引っ張るどろろの後に続くと、小さな小屋が見えた。

(寺か…)

どろろ「ここがちょうどいいや。止むまで休もう」

そう言ってどろろは屋根の下に腰を下ろす。

「…百鬼丸、濡れるよ」

Aが手を引いても、百鬼丸は空を見上げたまま動かない。

「…あっち、座ってるからね」

聞こえないと分かっていながらも話しかけてしまうのは癖か。

屋根の下に入ろうとしたとき、一人の女性がいることに気付いた。

寺の前で手を合わせている。

声をかける理由もないので、Aはそのままどろろの隣に立った。

それから暫く、沈黙が流れた。

雨の音だけが聞こえる中、沈黙を割いたのはあの女性だった。

お須志「あの…もし…」

百鬼丸に声をかけているようだった。

どろろ「無駄無駄、ここが聞こえないんだ」

それに気付いたどろろが自分の耳を指す。

お須志「…雨を、聞いているんじゃないかしら」

「雨…?」

どろろ「だから耳は…」

お須志「そんな気がしただけ」

お須志が微笑む。

それを見たどろろが、何か察したかのように言った。

どろろ「…あんた、いいとこの生まれだろ」

お須志「え?」

どろろ「そのお上品な物言いに顔つき、そこらの田舎娘とは思えねえ」

田舎娘、と聞いて、Aは自分の頬を手で覆った。

お須志「さあ…昔はどうあれ、今はただの行商人よ」

どろろ「ふぅん…ところでさ、さっきは何を熱心に拝んでたんだよ。商売繁盛?」

お須志「いいえ…兄上が早くお戻りになるように、と」

お須志は寺の方を向き、再び手を合わせた。

どろろ「へぇ…どこ行ったんだ?」

お須志「戦よ。もう五年になるかしら」

どろろ「五年って、もう…」

「どろろ」

どろろが言おうとしていたことを察したAがどろろの言葉を遮った。

遮られたことに対して不満そうな表情を見せたどろろに、Aが無言で首を振る。

「っ…」

ふと、何かの気配を感じたAが視線を反らした。

その先には倒れた侍がいる。

「…いる」

どろろ「いるって、鬼神か」

どろろが聞くや否や、百鬼丸と同時にAが走り出す。

どろろ「お、おい、待てよ!」

どろろも百鬼丸達の後を追いかける。

お須志「坊や達!」

お須志の呼ぶ声は、誰の耳にも届かずに雨音に掻き消された。

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輪廻 - めっちゃ面白いです!(^ ^) 続きを楽しみにしてます! これからも頑張ってください! (2019年7月11日 12時) (レス) id: bf927136c6 (このIDを非表示/違反報告)
- 何が総合2位wwオリフラ立てたからじゃん (2019年6月27日 20時) (レス) id: 50d994e323 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい。外されないなら違反報告します (2019年6月27日 18時) (レス) id: c56aad1eeb (このIDを非表示/違反報告)
姫鬼(プロフ) - siriusuさん» ありがとうございます、励みになります!! (2019年4月15日 19時) (レス) id: 72603904b9 (このIDを非表示/違反報告)
siriusu(プロフ) - とても面白いです!続き凄く気になります!更新頑張って下さい!q(^-^q) (2019年4月3日 16時) (レス) id: ee4308919b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:姫鬼 | 作成日時:2019年2月17日 11時

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