5つの宝石と12の物語Ⅲ -for lertle- (ページ22)

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＊僕ⅱ＊ページ22

「それから僕はネーディーの家に入り浸った。」

ウェイブはふうと息を吐いてにっこりと笑った。

「口の悪い無愛想な僕に君のお母さんは--ノンナは--毎日優しく笑いかけてくれていた。

　あたたかいココアを持ってきてくれて、本のとなりに静かにおいてね。

　ネーディーのとなりに座っていたよ。幸せそうに微笑んで。」

そうだ。母はそんな人だった。嫌なことがあっても眉ひとつ動かさずに幸せそうに微笑んでいた。

ウェイブの語る母と、自分の知っている母を重ねて今彼女はどうしているだろうかと考える。

ほとんど何も告げずに出てきてしまったのだから心配しているだろう……

「誰も信じないと決めていた。でもネーディーとノンナに出会って、

　少しずつ自分が変わっていっているのがわかった。

　少なくともネーディーの家で本を読んでいるときは幸せを感じていた。

　でもある日、突然それは奪われた。」

「突然…？」

「そう、突然に。なんの変わりもない朝。ちょっと曇っていた。風は穏やかで、暖かい日だった。」

～～～～～～～～～～

ダンダンダン

「おいウェイブ！いるか！？」

「なんだよネーディー。まだみんな寝てるぞ」

ドアを乱暴にたたく音にいら立ちつつも薄く開けると、ネーディーが顔をこわばらせて立っていた。

すっかり暖かくなった朝だった。

「ノンナと生まれてくる子だけは…守ってくれ、ウェイブ。私は行かなくてはならない！」

「は、ちょっとまて、行くってどこに…！」

「説明している暇などない！いいか、よく聞けよウェイブ。

　『終焉は近い。星の近づきによって。創世は近い。海と大陸の狭間から』

　わが子を頼んだ。しかしあれが13になるまで存在は知られるな。いいな。

　
　もし出会えたらこれを。」

早口でそういってネーディーはナイフをとりだした。

真っ白な、銀のナイフ。

「科学の国へ！」

「知識の住処へ！」