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既に泣きそうになるAを満足そうに見つめると、アーロンは背後に回ってAの肩口に自慢の鋭い歯を突き立てた
『いッ!…………ぅうッ……』
「痛てぇか?まだ甘噛みにもなってねぇぞ?」
『んぅ!い、たッ……いぃ……』
「わかるか?お前の腕に俺の歯がじわじわと刺さっていってんだ……その内に骨まで届く、その気になりゃそのまま砕くことも出来るぞ?」
『や、だッ……ぅぐッ………』
「我慢することねぇ、好きなだけ泣き叫べ、そうすりゃ早く終わる……だろ?A」
『ヒグッ!グスッ……アーロン、さんッ……ぅああ!!』
「シャーハッハッ!!お前は歌声だけじゃなくて泣き声も最高だ!!」
『ヒック……ヒック……ぃ、たぃッ……』
「えらく気前がいいじゃねぇかA、真珠が箱から溢れてやがる」
アーロンの言葉通り、Aの両手程の大きさの木箱は既に真珠でいっぱいだ
それでも焼けるような痛みが終わることなく残っていて、目から涙が流れ続けている
「……そんなに泣くなA、俺だってお前を好きで泣かせてるんじゃねぇ、お前が4年前に望んだことだ」
『ヒック……うんッ……グスッ……これで、いいの……』
「………俺が怖いか?」
『……ぅうん……』
「俺が憎いか?」
『……ぅん……』
「俺のことが……嫌いか?」
『……子どもの頃ほど……嫌いじゃないよ?』
「そうか……」
さっきまでのサディスティックな素振りが嘘のように、Aの頬に残る涙の跡を拭うアーロンはとても穏やかだ
割れ物を扱うような手つき、子どもをあやす様に優しい声、何より慈しむような暖かい眼差しがAの感覚をおかしくさせる
この4年間、仲間として過ごすことで、アーロンが異常なまでに人間を毛嫌いする理由も仲間という存在に重きを置いている理由も知ってしまった
だからAは、どんなに憎くても、村のみんなを苦しめている存在だということを理解していても……アーロンのことを拒絶することが出来なくなってしまったんだ……
「少し休む、俺のためなら歌えるだろ?」
『うん、もちろん』
「俺が寝た後は好きにしてろ」
『蛍の光窓の雪……書よむ月日重ねつつ……いつしか年もすぎの戸を……明けてぞけさは別れゆく……』
大きなベッドに横たわり目を閉じるアーロンは、ゆっくりとした旋律に合わせるような息をあっという間に寝息に変えた
寝ている間だけでも……穏やかな気持ちになれるといいね……
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夕憑紅(プロフ) - 面白かったです!!!頑張ってください!! (4月29日 18時) (レス) @page48 id: c53479bd69 (このIDを非表示/違反報告)
しゃらん。(プロフ) - fhfgんvydyさん» コメントありがとうございます!ルールも読み直してきました!少しづつにはなりますが童謡などに書き換えて行きますね!ご指摘ありがとうございます! (2022年9月4日 23時) (レス) id: b3a781ffa5 (このIDを非表示/違反報告)
fhfgんvydy - 既存の歌曲をコピペして使うのはよろしくないかと。。 (2022年9月4日 23時) (レス) @page20 id: a9575505fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃらん。 | 作者ホームページ:http://.uranai.riane.jarrck
作成日時:2022年4月28日 6時