Behind Love. (ページ22)

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あの後はもう、何も覚えていない。

目を覚ませば、静寂に包まれた部屋に身を縮こまらせて眠っていたようだ。

死ぬほど好きだと言われ続け、抱かれた。

私が憧れていた廉でも、青春でもなかった。

好きだとお互い言うのがくすぐったくって、2人で笑いあって……

そんな青春が待ち受けているのを楽しみに、高校生活を送ってきたようなものだ。

廉が好きだった。

そう、それは何時しか過去形に変わりつつあったのだった。

私が好きだった廉は、みんなに囲まれて笑っていて、太陽のように眩しい笑顔を見せる彼なのだ。

今のように感情を失って、ただただ想いをぶつけてくるような人間じゃない。

その姿はまるで、1ミリたりともズレずに地球の周りを公転し続ける月のようだ。

廉は今この部屋にいないようだ。

ドアの向こうでゲームのアクション音が聞こえる。

なんで？

そこまで愛している彼女なら、ゲームなんか視界に入らないんじゃないの？

1秒でも無駄にせず、私を見つめてもらっていた方が示しが着いたというのに。

そんな中途半端な廉の気持ちが、私を掻き回していく。

時計の短い針が7を回ったところだった。

『廉、私帰るね』

廉「……は？だからなんで？」

『親が心配するの。帰る』

廉「……はぁ」

え………？

てっきり必死に引き止めてくると思ったのに、聞こえたのは大きなため息だけ。

廉は無造作に立ち上がったと思うと、隣にあった引き出しに手を伸ばした。

廉「……Aなら俺を受け入れてくれるって信じてたんに」

……ねぇ廉、戻ってよ。

あなたの世界に、二度と太陽は姿を現さないの？

………きっとそうなんだ。

廉の手に握られている、鉛色の手錠がそう語っていた。