45._ S side_ ページ46
最近はずっと、岸くんと一緒にいる俺。
利用してるって言い方は悪いかもしれない。
でも間違ってない。
廉を忘れたい。
心の傷から目を逸らして、ひたすら岸くんに縋り付く。
我ながら、最低だな。
岸「おーっす、」
風邪をひいた俺ん家に、わざわざお見舞いに来てくれた岸くん。
紫「ごめん、わざわざ」
岸「バカ風邪ひかないって聞くけどな」
紫「岸くんの方がバカだから俺が風邪ひいたのー」
岸「え、あ、そういうこと！？」
岸くんはからかいがいがあって面白い。
一緒にいて楽しくて、まるで………。
……ううん、だめだよ。
岸くんはきっと、友達として一緒にいてくれてるだけ。
こんな男好きな俺を知ったら、気持ち悪いって言うんだろうな。
…でも、信じてみたい。
こんな岸くんならきっと、って信じたい。
岸「…紫耀ってイケメンだよな」
紫「へ？」
なんでこんなタイミングで？
岸「……俺さ、廉とずっと一緒にいたんだけどさ」
紫「うん、…？」
岸「…廉のこと、好きだったんだよ」
まさかのカミングアウト。
紫「え……」
岸「引くよな、ごめん！」
ドアノブに手をかけ、出ていこうとする岸くんを呼び止める。
紫「岸くん！」
岸「…帰るわ、お大事に」
紫「俺も、廉のこと好きだったんだよ」
岸「え…？」
紫「…でも、諦めたんだ、廉には好きな人がいるから」
Aと廉がお似合いだなんて、言う日が来るなんて思ってもみなかった。
紫「その2人を、応援したいんだよ」
諦めるんだ、そう、諦める。
岸「……そう、なんだ」
ショックを受けてる、分かるよ。
紫「…俺、岸くんなら」
岸「………？」
紫「……信じられるよ」
なぁ、廉？
Aの言葉、そのまま返すみたいになるけどさ。
…大好きだったよ。
頭の中で唱えて、岸くんの目を見つめる。
…俺たちのことも、応援してろよ？
目の前のその瞳に、微かな希望が見えるんだ。
一歩一歩、進んでいく。
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作者名：ぷち。 | 作成日時：2020年5月8日 1時
