灰色に生きる情報屋は

客が九人 ページ10

女性の依頼を達成して早一週間。

希望通り、依頼は其れ以降来ず、毎日椅子に座って本を読むという有意義な時間を過ごせた。

とはいえ、最近ヨコハマに区の指定災害猛獣である「人食い虎」が現れたそうだけど、、、

夜遅く、、、然も決まって月が出ている夜にしか出ないそうなので私には関係のない事だ。

それに、、、《電話ダヨ！電話ダヨ！》

思考を急に中断したのは、一本の電話。聡い方なら誰か分かるだろう。

此の平和な時間はそろそろ終わりか、と溜息を一つ零し、電話を取る。


《虎の少年の入社試験、何が良いと思う》


開口一番此れだ。


だから此の人は苦手なのだ、私が何でも知ってると思ってらっしゃる。

厭、人食い虎が少年だという事は察していたし、勿論知っている。

だからと言って唯の情報屋である私に入社試験の内容を決めて貰うというのは如何なものか。

適当に返事をすれば問題無いだろう。気に入らなかったら自分で考えれば良いのだ。


「爆弾魔が探偵社に立て籠もった、、、とかで良いのでは」


そう答えると、わあ、有難う、等とおちゃらけた返事をして電話が切られた。

矢張り太宰さんと喋ると疲れる。

然し、虎少年には興味がある、、、数日以内に武装探偵社に馳せ参じようかな。

久しぶりに私用で外出する事を決めた気がしなくもない。

最近は依頼でポアロに向かったりルパンに向かったり、、、

嗚呼、でもレンガ倉庫には行ったか。

久しぶりに散歩でもしようと思ったら災難にあったな、ここヨコハマでは日常茶飯事だけど。

結局その日は太宰からの質問以外に電話も依頼人もなく、ゆったりとした一日を過ごしたのであった。

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