†参拾肆話† 落涙の価値 ページ37
シンに手渡されたキットの簡易な検査薬の漆黒の十字架に磔にされた私の目から、涙が溢れる。
一瞬でも『嘘だ』と思って、腹の中の存在を否定しそうになった自分の哀しい考えに、堪え切れずに嗚咽が漏れる。
「…っう…」
早くカルラさんに結果を知らせたくて、私は無理をしない程度に走り出した。
…向き合った二人の始祖兄弟。
対照的で、何処か似た二人。
彼等は互いに向き合っていたが、シンは不意に獰猛な瞳を煌めかせて私を見つめた。
「…やぁ、結果は聞かなくても解るけど…」
「シン…?」
小さく…本当に小さく首を傾げたカルラさんの瞳が、微かに揺れた。
「…兄さん、オレは…」
カルラさんに声を掛けながら、シンは私の方に歩き寄ってくる。
「…シン…っ!!」
珍しく苛立ったような、焦ったようなカルラさんの声が響いた。
「…っ、」
伸ばされた手は、私の指先を掠め。
何時の間にかシンが手にしていた銀に鈍く…そして鋭く輝く刃の長いナイフが、私の首に押し当てられる。
今や見慣れた、カルラさんの生ハム用ナイフが。
「…あ、…っ…」
余りの恐怖と緊張に、掠れた声しか出せない。
「…兄さん、三分だけ時間を…頂戴よ」
「…決して、傷付けるな…」
瞳の中の、微かに揺れたシンへの痛い程の信頼の光。
「…シ、ン…?」
「…安心してよA…、…ゆっくり、歩いて。
大丈夫だから、オレに任せて?」
首に当てられたナイフは少しの距離を保ち、抵抗する事も許されない。
「…シン、」
小さく響いたカルラさんの声が、消えた。
†参拾伍話† 王弟の憂鬱→←†参拾参話† 選んだ軌跡(みち)
ラッキーアイテム
眼鏡&眼帯
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 59人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
*SSU* - カルラ様〜〜〜〜〜〜♪愛してる〜〜〜♪ (2020年5月10日 2時) (
レス) id: b6be28c7e2 (このIDを非表示/違反報告)
詩音(プロフ) - 忘れてましたが！詩音は、私の3DSのアカ、こっちはスマホのアカになります。 (2017年7月4日 18時) (レス) id: 7eba9d74c6 (このIDを非表示/違反報告)
詩音(プロフ) - ゴミみたいな下手な絵でカルラさん御免なさい… (2017年7月4日 17時) (レス) id: 7eba9d74c6 (このIDを非表示/違反報告)
詩音(プロフ) - 携帯買ったので、一々パスワード入れずに済む…っ!！( ≧∀≦)ノ嬉しい (2017年7月2日 20時) (レス) id: 7eba9d74c6 (このIDを非表示/違反報告)
詩音 - Schicksalさん» そうですね。カルラさん好きの人に会えて光栄です!!これからも閲覧宜しく御願い致します♪ (2017年6月27日 22時) (レス) id: 30e1d5a9e0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩音 x他1人 | 作成日時：2017年4月2日 21時
