29.文化祭前日 ページ29
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分かってる。
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＊「いいんちょー、水風船足りない！」
「あ、はいはい！こっちにストックあるよ！」
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菜月ちゃんは可愛くて、頭も良くて、細くて、白くて、髪の毛だってツヤツヤで人当たりも良くて
…私が知らない二宮くんの過去も知っていて。
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“ギターのことは聞いてないんだ？”
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…。絶対、あっちの方がお似合いだって分かってる。
分かってるのに、消してしまえばいいと分かってるのに。
「好き」を確認するたびに、その色が濃くなっていってしまう。
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文化祭は明日、という直前。
6限も潰して、放課後もみんな潰して。明日の縁日の準備なんかをしているそんな時間。
射的チームは射的を、ヨーヨーチームはヨーヨーを、という具合に役割分担をして笑いが絶えない準備中。
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私はわたあめチームだったから、わたあめの機械を設置して、という簡単な作業で。
委員長だから色んなところの手伝いをしようとしていたら。
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……いた、ら。
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和也「委員長」
「うっわ！？…ぁ！？」
和也「…うるせー……。」
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不意に後ろから、耳元で大きく聞こえた二宮くんの声が全身を脈打って
ビクッと反応してしまった。
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危ない、危ない。平常心。
そうだ、菜月ちゃんのため。
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二宮くんとは、あんまり関わらないようにしよう。
そうしたら、きっと「好き」も消えてくれる。
一石二鳥じゃない、そうしよう。
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前の関係に戻ろう。
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「な……んでしょう」
和也「水風船。ストックどこ」
「あ、それならあっち」
和也「え？どこ？案内しーーー…」
「森くん！水風船案内してあげて！」
森「え、俺？おっけ」
和也「は……？」
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もうやめてしまえばいいんだ。
もともと女嫌いだって言うんだから、最初から期待しなきゃよかった。
だけど、どうしてだろう。
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ばたばたばた、と慌てて教室を出て色んな教室が明日の準備をしている異空間の中
私たちのクラスの道具がストックされてる、家庭科準備室の扉を勢いよくガラガラと開けて中に入る。
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「はっ…………、」
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消えてくれない。
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