25.二人だけの世界 ページ25
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和也「菜月」
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“菜月”と躊躇いもなく動いた二宮くんの唇を私は横から見て
どこか切なそうで、胸がギシ…。と軋む音が聞こえた。
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菜月「和くん。久しぶり、元気してた？」
和也「あー。そっちは？」
菜月「見たら分かるじゃん、元気だよー(笑)」
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なんだろうこの、入れない空気感。
疎外感。
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菜月と呼ばれた女の子は可愛くて、細くて、白い肌が綺麗で。いわゆる「可愛い女の子」で
制服は隣校の女子校。進学校で有名な。
私とは正反対な。
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ギリ…。と買い物袋を握る手に爪が食い込む。二宮くんが何のためらいも無く名前で呼ぶ女の子。
女嫌いって言う二宮くんが、「菜月」と呼んだ瞬間口元を緩ませた女の子。
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暑さが滲む。
もうすぐで梅雨が明ける。
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菜月「あれ…、その子は？」
和也「あ？あー…」
菜月「え、もしかして彼女？放課後デートしちゃったりしてんの？和くん」
和也「ちげーよ(笑) 文化祭委員の買い出し途中」
菜月「文化祭！あれ、珍しいね。こんな時期に。え、いつ？」
和也「今月の17日」
菜月「6月17日？和くんの誕生日じゃん」
和也「あー、そうね」
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淡々としたリズムで行われていく会話。
「和くん」と呼ぶ声。誕生日。そんなの知らなかった。そうなんだ。
二宮くん、17日誕生日なんだ、と心の中でそうつぶやく。
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何か二宮くんと菜月ちゃん、が話してるけど耳に入ってこない。
気まずくて、肩身が狭くて、どうしようもない。さっきまで嬉しかったのに。
楽しかったのに。あれ？おかしいな。変だな。
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私、今。消えたいーーーーー……。
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和也「A」
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ーーーー…え。
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和也「A。」
「へ…、あ、は、はい」
和也「中学ん時の同級生」
菜月「澤野菜月です」
「あ…、春日……Aです」
菜月「Aちゃん！よろしくね」
「あ……、よろしく…です」
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ああ。なんで。
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パチリ、と横を伺うと目と目が合う。
少しだけ口角が上がる、二宮くん。
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ああ、なんで。
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