19.見えなかった壁 ページ19
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「ひっ」
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不意に置かれた手に驚いて、反射的に振り向くとそこにはヘッドホンを首にかけた二宮くんが
安定の無表情で立っていた。
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「あ…、二宮くん」
和也「……あんた、これ。教室に忘れてった」
「え？あ…ぁ、筆箱。いいのに明日で」
和也「別に。明日渡そうと思ったけどたまたま歩いてんの見えたから」
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…。
……。
会話終了…。
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行き先は同じで、駅だから。なんとなく「じゃあ」って言うのはおかしくて
二人とも無言のまま、肩を並べて歩く。
どうしよう。なんか話題。なんか…話題。あ、そうだ。
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「あ…、二宮くんってギター弾けるの？」
和也「……は？」
「相葉くんが言ってて。ニノはギターが弾けるんだよ！って」
和也「……またアイツ余計なことを」
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はぁー…、って二宮くんは溜息を吐くと星空をバックにして私に聞こえるか聞こえないかぐらい小さな声で
「弾けるよ」とだけ呟いた。
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「あ！…じゃ、じゃあさ。文化祭で弾いてみたりとか」
和也「ぜってーヤダ」
「ですよね」
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即答か！いっつも私の言葉無視するくせに、こういうときだけ即答か！くっそ！
でもめげない。相葉くんに強引に取り付けられた約束とはいえ、約束は約束。破っていいわけがない。
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「えー…、でも見たいな。私、二宮くんがギター弾いてるところ」
和也「……なんで？」
「えっ？」
和也「だから、なんで？」
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「なんで」そう問われたら「好きだから。かっこいいから。」としか答えようがない。
でもそんなこと答えたら、私の人生が一瞬で砕け散る。
どうしようかな、なんて思っていたら二宮くんが先に歩いてて何歩か距離が出来ていた。
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私は慌てて足を進める。
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和也「ーーー…ギターは弾かねぇよ」
「え？」
和也「誰がなんと言おうが弾かない」
「なんで……」
和也「あのさ」
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でも。
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和也「その理由、アンタに言う必要ある？」
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思った以上に、距離は大きくて
歩いたって、それ以上は進めなかった。
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