14.ぶっきらぼうな優しさ ページ14
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二宮くんが言った『アイツ』は、誰を指しているのか。それはすぐに分かった。
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「あ…。…、私の家居酒屋してるんだけど」
和也「……春日ん家？」
「うん。お店の常連さんで。イヤホンを忘れたのは、お店の中に」
和也「……」
「だから、変な関係とか！そんなんじゃないよ」
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どうしよう。ちゃんと声出せてるかな。裏声は出てないかな。
壁ドンどころか、だって、だって、だって。
二宮くんはスマホをポケットにしまって、何もしない状況のまま私を真っ直ぐ見つめてるんだもん。
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壁ドンされながら、真正面から見つめられたら多分私本気で今日死ぬんだと思う。
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和也「……あ、そ。」
「…う、うん」
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なんつー塩対応。そっちが質問してきたから答えたのに、なんなのよ！って心の中で怒って
キッと睨みつけようと目を上げると、私の顔の横に手を置いて私を見下ろしてる二宮くんと目が合う。
あ、ダメだった。そうだった。
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ううう、って悶えながらガタンゴトン…。と電車は揺れる。
あと5駅はある。この状況で5駅耐えろと！地獄か！
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「あ…、のさ」
和也「……」
「こ、この…体制はなんなんでしょうか…？」
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ハハハ、って乾いた笑い声で「あくまで」自然に聴いた感じを装う。
本当はものすごく気になってる。なんでこんな格好させられてるんだろうって。
近いし。…近いし。
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そう思っていると、二宮くんがふわふわの髪の毛を掻きながら口を開く。
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和也「……あぶねーんじゃねーの」
「へっ」
和也「……こういう満員電車。女はあぶねーんだろ？」
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…あ。
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二宮くんの言葉に、この前の痴漢事件を思い出す。その時に「女は我慢してんの！」と叫んだ黒歴史。
…さっき、足を踏まれたから。
もしかして危ないって思って、わざわざ守ってくれたの？
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(…なにそれ……)
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ドキドキ。
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和也「あっぶね！」
「ご、ごめん…！」
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大きく揺れる電車、彼の胸に倒れ込む私。
支えられる、腕。
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和也「へーきかよ」
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収まれ、心臓。バカヤロー。
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