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帰ってきた四葉さんが手にしていたのは王様プリンと、何かのストラップ。
「これいおりんにやる」
ぽいっと手渡されたそれはゲームセンターのクレーンゲームでしか取れないろっぷちゃんストラップの限定版だった。ちなみに一部の都道府県でしか出回っていないレア物でいつもと違ってリボンの代わりに花のブローチを着けている、らしい。あくまでも市場調査の中で得た情報だ。他意はない。ただ、私の両手に包まれているこのろっぷちゃんがその丸い目で私の方をじっと見つめてくるのは可愛らしいかもしれない。
「かわっ……、四葉さんが要らないと言うのなら仕方なく引き取ります」
「おー。それさ、Aとかと一緒にゲーセン行ったときに取ったやつ。Aに頼まれて取ったら2個取れたんだよな。んで、1個くれた」
もぐもぐと王様プリンを美味しそうに頬張りながら四葉さんは言う。
「それなら四葉さんが持っていたほうが良いのでは？ 一織用さんは四葉さんにくださったようですし」
「そーかもだけどいおりんのほうが大切？にしてくれそーじゃん。俺はそれ欲しいやつに持ってて欲しいし」
四葉さんの意見も最もだ。何より私はこの貴重なろっぷちゃんが私のコレクションに仲間入りしてくれるのを待っていた。……のではなく頂き物は大切にする主義なので受け取らせていただきたいところだ。
ただ一織用さんのことを考えると四葉さんに持っていていただくべきだろう。好きな人とお揃いというのは憧れると一織用さんも言っていたことだ。
「一織用さんはもしかしたら四葉さんに持っていて欲しいと思っているかもしれません」
私もなかなか大胆なことを言ったものだと思ったが、四葉さんは言葉の真意など全く気付かないようで、んー、と間延びしたような声を出して首を傾げた。
「じゃあ、いおりんの部屋に置いといて俺が時々見にくればいんじゃね？」
そう四葉さんは不思議な理論を展開し1人、名案じゃん、と納得していた。
「んじゃ、あんがと、いおりん。また来る」
そのすぐ後、プリンを平らげた四葉さんはそう言って私の部屋から出て行った。
「……全く鈍感な人だ」
四葉さんが置いて行ったろっぷちゃんを見ていれば独り言が溢れる。アイドルとしてゴシップに流れるのは御法度にせよ、一織用さんの話を聞くたび彼女の想いの少しくらいは届いてほしいような気もする。
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作者名：汐見 | 作成日時：2020年5月15日 18時
