一織くんとおいしいプリンの作り方。 (ページ11)

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シャーペンが紙の上で立てる音だとかノートのページをめくる音が響いている、そんないつも通り3限目。教師の出した問題を解き終わったのか、ただ単に集中力が切れたのか、徐々に話し声が聞こえ始めた。

とうに解き終えて窓の外を眺めていた私は視線を教室内へと移す。頬杖をついて眠そうにしている人もいれば、真剣に問題を解いている人が大半だ。まばらにある空席は全て仕事で欠席の生徒のものだというのだからさすが芸能科である。

廊下側の席の四葉さんは後ろを振り返って一織用さんと談笑していた。時折一織用さんはシャーペンを動かしているのでまだ解いている最中なのだろう。

消しゴムが机から落ちる。四葉さんが自然に拾い上げた。

今度の映画にもそんなシーンがあったような気がする、なんて考えていれば一織用さんと目が合った。彼女は軽く微笑んで視線を四葉さんへと戻す。

咄嗟に顔を窓の外へ向ければ嬉しいような驚きが心をいっぱいに満たした。顔が熱くなっているのを感じる。おかしい、これは可愛いだけでは言い表せない何か別の感情だ。

「答え合わせを始めようか」

教師のその声にはっと我に返った。丸だけが増えていくノート。はてなばかりが増えていく私の頭の中。その後はあまり授業に身が入らなくて集中できずに終わってしまった。