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「そういえば陸くんはもしかして天の言ってた弟さん…?」
とても似ているし天にぃと呼ぶところから勝手にそう信じ切っていたが、聞いていなかった話である。
結局、陸くん呼びになったのはなんとなくとこの日本のお国柄である。
陸くんはえっと目を見開いて驚くし、天はハッとしてすぐ私から目を逸らした。
困惑しながら見つめ合っている二人を横目に私はケーキの最初の一口を口に入れた。
幼い頃よく頂いていた味である。
あの頃はなんとも思っていなかったが、きっと売れ残りのケーキたちだったのだろう。
味が美味しいのは変わらずでもちろんのことだったが。
あの国の溶けきらないほどの砂糖で拵えたスイーツや天にあげたケーキのようにビビッドな甘さではない。
柔らかいスポンジとやさしい甘さのケーキである。
ほろほろと口の中で解けるケーキを堪能していればやっと天が口を開いた。
「まあ、そう。
でも、秘密だよ?」
そういう声はケーキくらい甘くって小悪魔のような笑顔を見せられれば逆らうことはできない気がした。
その挙動はあの音楽番組で見たアイドルの九条天にそっくりで彼はやはりあの九条天なのだ。
こくりと私が頷けば良い子とでも言うようにまた微笑んでケーキを頬張る。
その幸せそうな表情はあの時から変わってなくて、可愛らしくって、愛しいなんて思っちゃう。
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汐見(プロフ) - 結夏さん» 素敵な感想ありがとうございます。励みになります。これからもそう思っていただける作品になったらと思っております。同時に更新、大変お待たせをいたしました。これからもこの作品並びに不束者ですが汐見をよろしくお願いします。 (2019年11月27日 20時) (レス) id: ff314090b7 (このIDを非表示/違反報告)
結夏 - とても面白く、お話の世界観に引き込まれ時間も忘れて読み進めてしまいました。更新お待ちしております。 (2019年6月30日 14時) (レス) id: 1273e93dd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:汐見 | 作成日時:2018年11月16日 19時