Vanilla【YG】 (ページ9)

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やっとだ、やっとだ、やっとやっとやっとやっと、

「いらっしゃいま、あっ、いらっしゃーい！」
「ん、いらっしゃいませ」

会えた。
　
「こんにちは！」

なんで自分がこんなにうきうきしているのか分からない。さっきまでなぜあんなに会いたい会いたいと焦っていたのかわからない。
だから、急に今までの自分の盲目度合いが恥ずかしくなってきて、しゅん、と花が枯れていくように気持ちがしぼんでしまった。

けれど、今日もそこに二人はいた。

振り返ればあっという間、とよく言うけど、一週間ってそんなもんだ。振り返れば、あっという間。だけれどその中には大変なことだらけで、過ごしてきた時間を思うと気が重くなるし戻りたくないと切実に願うし、全然あっという間なんかじゃない。
そのことを、忘れたかったのだろう。

この間とは異なり、二組ほど客が入っていた。カウンター席は空席だ。

「お好きな席へどうぞ〜！」

お昼どきに来たため、ジンさんはパスタを作っていた。ユンギさんがソースを煮込んでいたが中断し、伝票を取り、カウンター越しに話しかけてくる。

「ご注文は、」
「えーと、パスタAセットで」
「お飲み物は」
「コーヒー、コールドで」
「お砂糖ミルクはお付けいたしますか」
「いえ、大丈夫です！」

目で問うように私がわざとらしく笑うと、ユンギさんも嬉しそうに微笑んだ。

「ユンギヤユンギヤ、パスタAセット入りま〜す！ってやんないの？やろうよ！」
「やんないですよ、二人しかいないのに」
「だってそれっぽいじゃん」
「それってなんですかそれって」

トマトソースの香りとともに、気分が明るくなってきて、これを日常にしたいと思った。

ただ私のあとにも、また一組客が来、二人は少々忙しそうだった。

ジンさんはお客さんと積極的に話す方なのか、色んな人と雑談をしている。
時々私とも話しつつ、なれた手付きで作業をすすめていた。

ただ、ユンギさんは、いろんな人とは話さない。なんとなくそういうキャラだなーとは思うけれど、なんで私とは話してくれたのだろう。
まあ、あのときいた客が私だけだったからだろう。逆にそれ以外なにがある。

少し日常のなかで変わったことがあっても、この場所は変わらずいるよ、ということを、オレンジの空間が教えてくれるようだった。2回目なのに、こんなに落ち着くのはなんでだろうと思いつつ、何もせず、ぼーっとして料理を待った。

先週のように、幸せだった。