Vanilla【YG】 (ページ2)

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…暇だ。

「ぁぁぁーーー！！！！！」

部屋に汚い私の声が響いた。

仕事があれば仕事があるで忙しすぎてしんどいのに、休みの日は特にすることがなくてそれもまたしんどい。
久々に高校時代の友達に電話をかけてみたら、彼氏といるからまたねと切られ、メンタルブレイク寸前。
小さなソファーに寝っ転がっていても何も生まれない。
明日からまた仕事で、荒波に揉まれるよう過ごすというのに、休みの日の有効的な活用の仕方が分からないせいで今日も残すところあと半分だ。

ソファーから転がり降りダメ元で、「休日暇」と検索してみる。

暇なときにすることの記事がたくさん出てきた。便利な世の中だ。文明の進化。

記事を適当に見ていたとき、ある一つのワードが目に入った。

「散歩、か」

とてもありきたりだ。
でも、改めて考えてみると、家の周りなんかをじっくり歩いたことがなかった。
なにかがあったとしても、通り過ぎているかもしれない。神社とかあるかな、いやないか。それは流石にない。

「…よし」

私は爆速で身なりを整え、外に出る決意をした。特に理由はない。

この小さな決意が、新たな日々の始まりだとは思ってもいないまま。

久しぶりに履くよそ行きの靴にうきうきしながらドアを開けると、雲一つない春の空が広がっていた。

なぜか、いい予感がした。