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運ばれてきた食事を食べ終えた三人は、
食後のドリンクを飲みながら話を始めた。
剛典「Aはダンスを怖いって思ったりした?」
『演技を続けてると、どうしても練習の時間が減っちゃって。
他のメンバーより一歩以上出遅れたりとかするし、
私が居ない時のダンス動画を見たりとかすると、
なんか……カッコイイな、凄いなって思った時があって』
剛典「うん」
『その瞬間、自分のダンスってなんだろうとか思ったんですよ。
で、ふと、メンバーと並んでダンスすると、
そっちに気を取られて自分が分かんなくなったりして……』
ホッと息を吐くと、Aは笑いだした。
自嘲気味の笑顔。
『練習時間が圧倒的に足りない。
今の私がそこに並んでも、みんなの足を引っ張る。
そう思ったら踊れなくなりました』
海青「んな、足引っ張るって……」
剛典「悔しかった?
置いてかれたように感じて」
『悔しさしかないです。
今の私がここに居たらみんなを引っ張るだけだ。
ダンスに集中したくても、演技が入ったり撮影だったり、
なんなら力を発揮する場であるライブ当日を迎える。
焦りと悔しさしか無いです』
『なんで私は出来ないんだろう。
他のみんなはできて、私は女だからとか、
言い訳を並べそうになる。
そんな自分と、真剣にやってるみんなが並ぶことが、
怖くなったりもしました』
剛典「連ドラ引っ張られてるしねぇ。
練習したいよねぇ」
『したいですね。
前みたいに集中して楽しく踊りたい。
けど、今の私は楽しく踊れない。それが嫌です。
そう思ったら自分のダンスってなんだっけって疑心暗鬼』
剛典「そりゃ苦しくなるわ。
好きなことだもんね」
『……はい』
剛典の言葉を認めた瞬間、
Aは涙を浮かべたままこぼさないよう堪えてた。
剛典「海青から見たAはどんな感じ?」
海青「ずっと振付の動画見て、一人でスタジオに籠って、
アホみたいに踊り明かして筋肉痛にはなるし、
それでも俺らに遅れ取りたくないって努力なのも分かるから、
休んで欲しいって気持ちと、Aさんの不安の葛藤が、
俺の中でも複雑です」
剛典「そっか」
『まぁーー、本当ごめん。
立ち直る』
剛典「とにかくAは焦らないようにね。
いつか絶対立ち直れるから」
『はい』
Aと海青は顔を見合せて頷き合った。
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美紀(プロフ) - 移行おめでとうですコロナと気温差がすごいので体調に気をつけましょう (1月23日 20時) (レス) id: e7f1610a24 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪乃 | 作成日時:2024年1月21日 17時