140話 あの笑顔が見たくて ページ45
皆の声が聞こえる。
皆が俺をヒーローにしようとしている。
……でも、俺は…。
｢王子!!｣
｢伸也さん……｣
｢ローシルクが待ってるぞ!!王子の、活躍を!!言っているんだ！お前はヒーローになると!!｣
｢王子、もういいじゃないか｣
｢とう、さん…？｣
｢これだけ頑張った。救けたいと思った少女も救けた。王子がヒーローになるには、もう十分なことじゃないか。何を迷う必要がある。みんなは王子を、ブレーメンを必要としている｣
｢………っ俺は…｣
────『俺に憧れてくれて………』
｢いいんだ、王子。もう自分を許してやれ｣
────『生きろ。救って、生きろッ』
｢────っ!!｣
ああ、兄さん。
やっと思い出したよ。
兄さんは、俺に生きて欲しかったんだね。
俺に、救って欲しかったんだね。
────『君がいなきゃ！！僕はここにいなかった！！！』
────『お前が言ったんだぞ!!』
────『俺達は、約束を遂行したんだ!!』
────『あなたは根っからのヒーローなんです！！』
────『俺達の、ヒーローになってくれ！！』
────『王子様みたいでカッコよかった』
そうだよ、そうだよな。
｢俺は……｣
｢童話くん！｣
｢立て！王子！｣
｢童話さんっ！｣
────『助けてくれて、ありがとう』
｢あの笑顔が見たかったんだ……｣
｢あ？｣
｢“助けてくれてありがとう”って言ってくれる…笑ってくれる…思い出したよ…｣
｢んだと？｣
｢あの笑顔が見たくて…ヒーロー目指してんだって｣
俺は笑った。
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作者名：roronoa | 作成日時：2019年4月14日 14時
