10.クリスマスプレゼント ページ10
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驚きで、言葉を失う私に、彼は口の片端を上げて、得意気に笑った。
ハラハラと舞い落ちる細雪が、該当と月明かりによく映える。
「・・・何してるん?」
動揺を隠し切れず、細々と零れ落ちた声を、廉はなんなく拾い上げて、笑った。
永瀬「外の空気吸ってた、だけ」
「だけって・・・、」
アプローチにある階段に座る廉の隣に、私もゆっくりと腰を下ろした。
どちらともなく吐き出した吐息は、白く濁って空に消える。
「・・・鼻、真っ赤やん」
永瀬「ん?あー・・ね、」
「寒かったんやろ、本当は」
永瀬「や、別に。俺、寒いの好きやし」
「昨日嫌いって言ってたやん」
バカだ。廉ってほんとに、バカ。
言い返す私に、廉は何も言わず。それどころか、びっくりするくらい優しい笑顔を向けてくるから、不意打ちのそれに、何も、言えなくなる。
「・・・いつから待ってたん?」
永瀬「んー・・・さっき?ぐらい?」
「待ってるなら、家の中で待てば、良かったやん」
永瀬「だってお前、いつ帰ってくるか分からんし」
「・・・ていうか、そもそも用事なら明日にすれば・・・、」
そこまで言いかけて、その先を制するみたいに。
強引に、目の前に差し出された紙袋。
ぐ、と胸に押し付けられて、戸惑う私に、廉はまた、あの、得意気な笑みを見せた。
永瀬「ほい。クリスマスプレゼント」
「え?・・・え、嘘、」
永瀬「こんなんで嘘つかへんわ。クリスマスはさ、今日だけなんやから。今日渡さな意味ないやろ?」
毎年恒例のプレゼント交換も、今年はもう、ないと思っていたから。
手に取った紙袋の重さに比例して、疑いの気持ちが大きくなる。
だって、いいのかな。こんなの。
廉にはもう、彼女が居て。私は、ただの幼馴染み。
そんなやつが、今日だけしかない、クリスマスを。
廉の、クリスマスを。
私がもらっても、いいのかな?
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紀衣 - 夏(なの)さん» わーー!待っていて下さってありがとうございます!コメントすごく嬉しいです!訳あってゆるゆる更新になりますが見届けていただけたら嬉しいです…(>_<) (2018年12月12日 23時) (レス) id: afbfeebc90 (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - 待ってました。久しぶりの更新とてもうれしいです!! (2018年11月18日 13時) (レス) id: d826207ec4 (このIDを非表示/違反報告)
紀衣(プロフ) - 夏(なの)さん» たくさん感想ありがとうございます!すごく嬉しいです!切なさだったり、廉くんのリアルさ(笑)だったり、気をつけながら書いていた部分に気づいて頂いてすごく有難いです!拙い言葉ばかりですがこれからも応援して下さると嬉しいです!マフラーもぜひ買ってください!笑 (2018年1月14日 17時) (レス) id: cdb8449478 (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - メインの廉くんが、リアルで凄いと思います!廉くんの細かい所まで表現されているし、それに出てくるボキャブラリーが半端じゃないです。とても読みやすくて…!なんかマフラー欲しくなってきました(笑)更新楽しみです。頑張って下さい! (2018年1月14日 8時) (レス) id: 5d55c4341d (このIDを非表示/違反報告)
夏(なの)(プロフ) - 初コメ失礼します!前作が気になって読ませて頂いて…とてもドンピシャリで!!Twitterもフォローさせて頂きました!最初はあいくるしい。って束縛とか、そういう系なのかな?と思っていましたが切ないお話で………きゅんきゅんと言うよりも染みると言うか…↑に続く (2018年1月14日 8時) (レス) id: 5d55c4341d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紀衣 | 作成日時:2017年12月30日 20時