あ い く る し い 。

１１．マフラー ページ11

．





永瀬「開ければ？」





階段に座ったままの状態で、廉が首をかしげた。


紙袋の中には、もう一段、包装された何かが入っていて、綺麗に包まれたそれを、恐る恐る解いていく。






「わ･･･マフラー！」






包装紙を全て取り払うと、黄色を基調として、赤、青、さまざまな色が織り込まれたタータンチェックのマフラーが出てきた。





「･･･って、今年も？」





去年のクリスマス。
廉から貰ったプレゼントは、マフラーだった。色形は違うものも、二年連続マフラーというチョイス。


人からの贈り物に文句を付けるつもりはないけど、私だったら、違うものを送るだろうから。ちょっと、腑に落ちない感じがする。





永瀬「そ、今年も。リニューアルバージョン」

「ふは、何それ」





でも、結局は、廉から貰える物ならなんだって嬉しくて。
廉は、私のことを思って、考えて、このマフラーを選んだのかな、って。そう思うと、やっぱり、愛おしさは募るばかりで。




また、宝物が増えてしまった。





「あ･･･そうだ、廉」





ふと、鞄に入れていたその存在を思い出して、手に取った。



渡すつもりなんて、なかったけど。



でも、買ってしまったということは、やっぱり私の負けだ。






「･･･はい、お返しです」






目の前に差し出された紙袋に、目を丸くした廉が、戸惑ったように、手を伸ばす。


指先が、袋の開け口に触れたところで、ようやく廉が言葉を発した。






永瀬「え、何？俺に？ええの？」

「うん、お返し、だから」






クリスマスプレゼントっていう名目だと、彼女に申し訳ないし、なんか、悪あがきみたいで、カッコ悪すぎる。


だから、お返し、っていう形なら、いいよね。
ギブアンドテイク。人間なら、普通のこと。



紙袋の中を覗き込んで、うお！なんて子供みたいにはしゃぐ廉は、きっと、気づいていないんだろうな。





私の気遣いも、想いも。


全部。気づくことは、ないんだろうな。

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