10．王様。 ページ10
「んで？影山がどうしたの？」
「あ、えっと実は……」
私はスガさんに、月島蛍が飛雄に言っていたこと、それに大しての飛雄の反応を話した。
するとスガさんは、「あー……」と何かを思い出すように話しだした。
「俺、日向と影山の中学の試合見たことあるんだよ。そん時から今も影山はすごかったんだけど、なんか一人だけで戦ってるっていうか」
「一人だけ……」
「そん時から影山には『コート上の王様』って異名付いててさ」
少しだけスガさんは、声のトーンを下げて言う。
「……でも俺は、影山のことが少し羨ましいかな」
「えっ？」
「いんや？なんでもない！」
スガさん……？
彼が少しだけ寂しそうな顔をしたのは、どうしてだろう。
だけど理由は聞けずに、その日はそのまま終わってしまった。
――――……
――――土曜日
「よし、じゃあ始めるぞー」
大地先輩の言葉で、三対三の試合が始まった。
飛雄がトスを上げて、翔陽がそれに答えるように高く飛ぶ。
だけど、相手の高いブロックに止められる。
「クッソ……！」
「そんな怖がらないでさ、王様のトスやればいーじゃーん」
月島蛍の嫌みったらしい言葉に、田中先輩は完全にキレている。
王様のトスって、なんなんだろう。
今の状態のトスを見ても、飛雄はすごい選手なんだと素人目で見てもわかる。
だけど昨日と同じで、飛雄はやっぱり何も言わない。
そんな中、翔陽がキッと顔を上げた。
「おい！さっきからなんなんだ王様王様って！なんだよ王様のトスって！」
「君、コイツがコート上の王様って呼ばれてる理由、知らないの？」
「なんか、コイツがすげえから相手の学校とかがビビって付けたんじゃないの？」
私も同じ考えだった。
きっとひがみから来たものだろうなって。
「そう思ってる奴らもいるけど……噂じゃ、コート上の王様って異名、北川第一の奴らが付けたらしいじゃん」
その言葉に、私たちは耳を疑う。
月島蛍はそんな私たちの反応を見て、さらに話し出した。
自己中な王様。横暴な独裁者。
味方のスパイカーを置いて行ってしまう、『王様のトス』。
それから――――
「……横暴がいきすぎて、あの決勝ベンチ下げられてたもんね」
飛雄がトスを上げた先には、誰もいなかった。
まさか怖いの？と月島蛍はおかしそうに笑っていた。
それから、飛雄の口から漏れた、弱々しい言葉。
「――ああ。トスを上げた先に誰もいないっつうのは、心底怖えよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2016人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏斗 - 初コメ失礼します！ とにかく始めにお礼を言わせてください！ こんな素敵な作品を書いて下さりありがとうございます!! スガさんの小説少なくないですか!? 数少ないスガさんの作品がこんな甘々なんて最高ですよ!! キュンキュンさせて頂きありがとうございました!! (3月10日 0時) (
レス) @page48 id: 73bfbf52f2 (このIDを非表示/違反報告)
zgdj - もうキュンキュン超えてギュンギュンしました！笑最高の作品をありがとうございます！🤍 (3月2日 19時) (レス) @page48 id: 9d014a95bc (このIDを非表示/違反報告)
ぴざまん - あまずっぺえ…良い… (8月11日 19時) (レス) id: 12362f5741 (このIDを非表示/違反報告)
らぅ - 37〜40の一連の想いに涙が止まりませんでした😭 (2022年9月28日 10時) (レス) @page38 id: 0e8ab4d39d (このIDを非表示/違反報告)
れむ。(プロフ) - 素敵な夢小説ですめちゃ好きです…😿♡ もっと早く出会っていればよかったなんて後悔してます😵💫 (2022年7月29日 23時) (レス) id: 31e76c62e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼空
| 作成日時：2014年5月19日 23時
