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44.初めての。 ページ44

「スガさん、気になる人がいるって……」


「そんなの、Aだよ」



ぶわっと涙が溢れて、「うー」と嗚咽を漏らした。


「ははっ、泣きすぎ」


「ズガざんのぜいでずよ」



そうだねと笑って、一定のテンポでポンポンと私の頭を撫でた。



「ゆ、夢じゃないですか」


「ん?」


「本当に、私のこと好きなんですか」


「うん、好き」



嬉しさと、まだ信じられない感覚に、胸が苦しくなった。



「Aこそ、影山のことはいいの?」


「断りましたよ……それに、私飛雄のことが好きだなんて一言も言ってないです……」



俺の勘違いか、とスガさんは笑った。



スガさんはゆっくりと体を離して、真剣な顔つきで私の顔を見つめた。



胸がドキドキと、時に苦しく脈打っているのがわかる。



こんな風にスガさんの顔を近くで見たのは初めてだ。



『Aのことが好きなの。』




まだその声が頭に残っている。



ずっと聞きたくて、諦めていた言葉。


こんな日は絶対に来ないだろうと、諦めていた。




だけど、今。




「…………俺と、付き合ってください」





目の前にある光景は、夢なんかじゃない。



視界が歪んで、大好きな人の顔が見えない。


返事をしたくても、喉の奥が苦しくて、嗚咽で声も出せない。



だから、必死に頷いた。


何度も何度も。



――――私も、貴方の恋人になりたかった。




「ふはは、泣きすぎだべ」



おかしそうに笑いながら、手で私の涙を拭った。



夢じゃない。


夢じゃない。



両思いに、なれたの。



スガさんの恋人になれたの。




こんなに嬉しくて、幸せなことはない。




「…………ねえ、A」


スガさんの手が、私の頬を撫でた。





「……キス、したい」




「え……っ」




私が返事をする頃には、もうスガさんの顔は近づいてきていた。



スガさんの頬も、赤い。



伏目がちな目に、ドキドキする。



こういう時、どういう顔をすればいいんだろう。



そんなことを考える暇はなくて。




唇に、温かいものが触れた。



わ……っと思い、思わず目を閉じる。


少し震えていて、温かくて、柔らかい。



初めてのキスは、とても幸せなものだった。

最終話.恋をしていく。→←43.好きなの。



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夏斗 - 初コメ失礼します! とにかく始めにお礼を言わせてください! こんな素敵な作品を書いて下さりありがとうございます!! スガさんの小説少なくないですか!? 数少ないスガさんの作品がこんな甘々なんて最高ですよ!! キュンキュンさせて頂きありがとうございました!! (3月10日 0時) (レス) @page48 id: 73bfbf52f2 (このIDを非表示/違反報告)
zgdj - もうキュンキュン超えてギュンギュンしました!笑最高の作品をありがとうございます!🤍 (3月2日 19時) (レス) @page48 id: 9d014a95bc (このIDを非表示/違反報告)
ぴざまん - あまずっぺえ…良い… (8月11日 19時) (レス) id: 12362f5741 (このIDを非表示/違反報告)
らぅ - 37〜40の一連の想いに涙が止まりませんでした😭 (2022年9月28日 10時) (レス) @page38 id: 0e8ab4d39d (このIDを非表示/違反報告)
れむ。(プロフ) - 素敵な夢小説ですめちゃ好きです…😿♡ もっと早く出会っていればよかったなんて後悔してます😵‍💫 (2022年7月29日 23時) (レス) id: 31e76c62e3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼空 | 作成日時:2014年5月19日 23時

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