144. ページ10
「赤也」
「わっ、つめてっ」
パラソルに戻ってきた幸村は空の色に染まったカキ氷を切原の頬に押し付けた。
横たわっていた切原は勢いよく飛び上がり、差し出されたものを見て目を輝かせた。
「ブルーハワイ間違えて頼んだからあげるよ。俺嫌いだし、いるだろ?」
目を細めた幸村は、強引にカキ氷を手渡し、ブルーシートに膝をつく。
それを見たAは幸村に素直じゃないな、と胸中で呟き、隣に腰を下ろした。
「いいんすか!
俺ブルーハワイ1番好きっす」
迷いなく店員にブルーハワイと告げていた幸村を思い出し、Aはクスリと笑みを零す。
幸村は元々切原にあげるつもりだったのだ。
ストローで緑の雪山を崩せば、しゃりしゃりと音を鳴らし、色は濃さを増す。
溶けるのを恐れ早く食べてしまえば、すぐに無くなってしまう。
(ずっと、溶けなければいいのに)
瞼に浮かぶ言葉はカキ氷に向けてか、はたまた日常に掛けられた幸せの魔法へか。
12時になれば、シンデレラはプリンセスではいられない。
来年になれば、Aはこの世にいられない。
しゃりしゃり。
しゃくしゃく。
先ほどまで宝石に映ったカキ氷を、今は恨めしく思う。
まるで皮肉のように肌を突き刺し、衝動のように指を動かせた。
「荷物は俺と赤也が見てるから、ジャッカルとAは遊んできなよ」
絵の具を落とした水のように色づいたそれが、容器の中で揺れている。
固体だったはずだというのに、あっと言う間に液体と化していた。
「ありがとう。
じゃ行ってくる」
溶けたカキ氷をちゅーっと吸い上げて飲み干したAは、立ち上がり砂浜へ向かっていく。
桑原もそれに続き、後を追っていった。
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SHINO(プロフ) - スノウさん» スノウ様!いつもコメントありがとうございます。スノウ様のコメントは本当に何度も読み返してはニヤけてしまって、とても力をいただいています。そうですね、私も主人公の気持ちをやっと書けたので嬉しいです。笑 どうか最後までお付き合いください。 (2017年4月20日 15時) (レス) id: cc409903fa (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - 雪さん» ありがとうございます。気をつけている事に気付いてくださって嬉しいです。fifthの表紙もありがとうございました。申請を出したので使わせていただきます!これからどのような展開になるかは秘密ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。ありがとうございます。 (2017年4月20日 15時) (レス) id: cc409903fa (このIDを非表示/違反報告)
スノウ - おつかれさまです!ついに主人公ちゃんから好き、という素直な気持ちが聞けて嬉しいのと同時に、これから彼女がどのように生きていくのか、不安なような楽しみなような。続編待ってます(^^*) (2017年4月18日 23時) (レス) id: 9bbfe87ee5 (このIDを非表示/違反報告)
雪 - お疲れ様です。続編も楽しみにしています。SHINOさんの花火を空が泣くと表現するところや、情景は目に浮かぶのに感情は明かさないようにするところとか本当に好きです。これからも頑張ってください。 (2017年4月18日 20時) (レス) id: 41f82b2237 (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - Yさん» コメントありがとうございます!儚さは私の意識している点でもあるのでとても嬉しいです。終わりを残念だと感じていただけるような作品をかけてよかったです。ですが、まだ終わりそうもないので引き続きお付き合いください。笑 応援、本当にありがとうございます。 (2017年4月16日 16時) (レス) id: cc409903fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SHINO | 作成日時:2016年9月8日 17時