ただ、愛が欲しかった。- fourth story -

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真柴Aside



以前、私が怪我をした時もこんな風に突然かけつけてきた。

酷く焦りを浮かべて、熱が浮くのを耐えるように。



その時も精市が光を呼んでくれたんだ。

きっと精市は気づいている。

私の心が誰に向いているのか。

『後悔、するよ』

準決勝のあの日、私たちの会話を聞いていたようだから。

きっと精市のことだから、私の気持ちを察してくれたのだろう。

……でも。




「なんで……なんで来たの」


私は会いたくなかった。

会いたくなんて、なかった。



「浴衣、似合うとるな」



私の言葉に反して、光はぎこちなく笑う。


違う、違う。

そんな言葉が欲しいんじゃない。
そんな光が見たいんじゃない。


私はただ、ただ光に幸せになって欲しいだけ。


それなのになんで。

なんで、なんでなんで……なんで。


私がどんな想いで、何度も貴方を傷つけたか。
どんな想いで光の手を離したか。

何もわかってない。
何も、何もわかってない。


「帰って、もう二度と会いたくないのっ」


もう、気丈に振る舞えないんだ。
だって私はそんなに強くない。
だって私はそんなに優しくない。

声も瞳も制御できないくらいに乱れて、見せたくない感情が彼が恋しいと泣いている。

これ以上、嘘を吐きたくない。
これ以上、光を傷つけたくない。
これ以上、自分を殺せない。



「A」


グイッと両手首を掴まれて、会いたくて堪らなかった瞳と相対させられた。

自分の名前が、自分のものじゃないように思えるくらい辛く耳に刺さる。


やめて。そんな目で見ないで。

そんな声で呼ばないで。


触れた手から伝わる熱が痛くて、水槽に入れられた金魚になったような気分だった。

人の手に触れられたら熱すぎて死んでしまう、声すらも出せなくて、人に見られている間しか価値がない。

彼の瞳に映らなければ私なんて塵と同じだ。



なんて、なんて愚かなのだろう。





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