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After the mission 2 ページ7

先輩と2人っきりの教室。

嬉しいはずなのに、気分は沈んでいた。






「はぁ」





名前で呼んで欲しい。


一度でいいから、その声で、俺の名前を奏でて欲しい。


なんて、我儘なんだろうか。





先輩はいつも幸村部長を目で追って。


優しい声で幸村部長を呼ぶ。



名前で呼ばれるようになっても。

幸村部長には、どうせ勝てない。



俺は、あんな声で呼んでもらえねぇんだ。




悔しい。


悔しい。




先輩の心は、幸村部長にしかいかないんっすね。




「切原くん」


「……」




今俺ぜってぇ、情けねぇ顔してる。

こんな顔、見せらんねぇよ。




「切原くん?」


「……」




顔を上げそうになるのを、じっと堪える。


呼ばないでくださいよ、先輩。


顔を上げたくて仕方がない。









「赤也くん」


「……っ!」



思わず、顔を上げた。

先輩が零したのは、確かに俺の名前で。


その声が、あまりにも優しくて、切なげで。

先輩の瞳が泣きそうに揺れていたから。



俺は先輩に手を伸ばした。





躊躇なく、先輩を抱きしめる。


強く、強く。

離れていかないように。





「切原、くん……?」


「うわぁ!すみません!!」




我に帰った俺は、弾くように先輩から離れた。


無意識だった。

無意識に、抱きしめていた。




「すみません!ほんとすみません!」



恥ずかしくて、先輩から視線をそらす。

だが、そらした先に映ったのは。



「え……」



窓の外に、幸村部長とその彼女。

2人は抱き合っていて、甘い空気が流れてた。


そうか、先輩はこれを見て、泣きそうな顔をしてたのか。

妙に納得できて、虚しくなった。




それを先輩がどんな顔で見ているかなんて、知りたくなくて。

俺は、先輩から視線をそらしたまま、言葉を吐いた。



「せ、先輩。俺用事あるんで帰ります!」



それだけ言って、教室を後にする。

先輩の声は一度も聞こえなかった。



こういう時、ほんとは慰めなきゃいけねぇんだろ。


だけど俺にそんな余裕はなくて。




情けないくらい、泣きそうだった。








_______先輩が、顔を真っ赤にしていたことも知らずに。







mission 2 完了

Mission 3 宣戦布告するっす!→←Mission 2 名前で呼んでもらうっす!



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ナツ - 赤也君かわいかったです!SHINOさん、やはり書き方上手です。ありがとうございました。 (2021年2月14日 22時) (レス) id: c58bd08887 (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - 愛さん» 返事が遅れてしまってすみません!通知が来ないことが度々ありまして。泣 この作品は本当に楽しく書かせていただきました!ほっこりするお話になっていれば幸いです。大好きな切原さんのかわいさをもっと上手く伝えられるよう、がんばります。ありがとうございました。 (2016年2月19日 2時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 随分と遅いのですが、完結おめでとうございます。一途な赤也が可愛くてたまりませんでした!主人公の本当の気持ちにも驚きましたし、何よりハッピーエンドで、微笑ましいです。可愛い赤也、ありがとうございました! (2016年2月7日 22時) (レス) id: 6223f97436 (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - hitomiさん» ありがとうございます!もっともっと納得できる作品を作れるようにがんばりたいと思います! 赤也の伝えようもない可愛さを私の文章力では伝えきれなくて悔しかったです。笑笑 完結までお付き合いくださり、本当にありがとうございました。 (2016年2月7日 21時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)
SHINO(プロフ) - あやねさん» ありがとうございます!作者もきゅんきゅんしながら書いてました!笑 ズコーッていくような展開でしたが、楽しんでいただけていたら幸いです。最後まで読んでいただき、そして素敵なコメントをくださり、ありがとうございました。 (2016年2月7日 21時) (レス) id: e7993006ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:SHINO | 作成日時:2014年7月5日 13時

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