【越前リョーマ】優しい君へ、

２９振り返らない ページ30

アメリカへと発つ、その日がやってきた。





ずっと望んでいた、場所。

そこへもうすぐ行ける。


心は興奮で弾んでいるのに、妙に寂しかった。





アイツがもしかしたら見送りに来てくれるかも、だなんてありもしない幻想。


馬鹿馬鹿しい。


あんな最低なことをした俺に、会いに来るはずない。



会いに来てくれたとしても、俺にはアイツを抱きしめることはできない。



やっぱり行かない、なんて言えるはずもなく。




アイツが来たら心が揺れるのを、予感した。





来ないでいい。


来ないで欲しい。





……来て欲しい。



矛盾した想いが交差して、ぐるぐると絡まる。









「おチビー！手紙書かないと承知しないからなー！！」


英二先輩。





「越前。お前が向こうで成功する確率は100%だ」


乾先輩。





「ビクトリー！！しっかりやれよ越前！！」


河村先輩。





「けっ。アメリカでもなんでも行っちまえ」


海堂先輩。





「越前なら、きっとできるよ」


不二先輩。





「そうだな、越前。こっちで応援してる」


大石副部長。





「油断せずに行こう」


手塚部長。





「越前ー！今度会う時はこの前の試合の続きだかんな！」


桃先輩。







みんな忙しいのに、わざわざ来てくれた。


この人達には本当に感謝してる。





「先輩達、まだまだっすね」




アイツのことは忘れる。


きっと忘れて見せる。





俺は沢山背負ってる。


立ち止まってはいられない。









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