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八十五話 ページ10

ー夜ー

稽古をつけるといっても、柱である私は勿論任務もある。だから夜は普通に任務に行き、朝方戻り、鍛錬して……

眠る時間はあってないようなものだが、それは昔からだし幼い頃の訓練から、頑張れば数ヶ月は眠らず動けるし、食事も、何も食べずに一ヶ月、水を飲んでいいなら三ヶ月はもつ。



鬼「ケヒヒッ稀血だ稀血だァ!!お前を喰えば俺はもっと強くなれる!!!」


『私に勝てたら喰わせてやるよ』



まぁ負けないが

ザシュッ



『……最近はそんなに強い鬼に出会わないな。下弦には会うが、上弦なんてカナエの時以来会ってない…』



ここに来て数年、私の血は稀血という珍しい血らしいことが分かり、鬼を誘き寄せるにはもってこいなんだが…なかなか十二鬼月には会わない。



『考えても仕方無いか。早く戻ろう』

ーーーーー

獪岳side


夏の暑さからかいつもより早く目が覚めた俺は、鍛錬をしようと外へ出た。



「……、……!」



…誰かいるのか?

あのカス(善逸)はまだ寝てる筈だし、先生は今の時間は朝餉を作ってる筈……なら、彼奴(豪柱)か?

音を立てないようそっと覗いてみると、そこには日輪刀を持って素振りをしている豪柱がいた。



『4758、4759、4760!』



……聞き間違いだろうか。今、4000っていう数字が聞こえたが……

まさかずっとやってんのか!?何回する気なんだよ…

そこから様子を見て、彼奴の構え方、姿勢をじっと見ていた。



獪「(回数こなしてるのに、姿勢が全くブレてねぇ…腕の高さも、刀を振る速さも変えずに、一回一回丁寧にやってやがる……)」



ただ素振りをしてるだけなのに、そいつのその姿は一種の芸術品みたいで、これが"綺麗"ってものなんだろうなと思った。



『4998、4999、5000!…よし、素振り終了。で?いつまでそこで見てるつもりだ?』


獪「……分かってたのかよ」


『生憎、人の気配には敏感なんだ。お前こそ、こんな時間にどうした?』


獪「暑くて起きちまったんだよ。鍛錬しようと思って、ここに来たらアンタがいたんだ」

『成程な』



素振り5000回なんて桁違いなことをした直後だっつうのに、目の前のこいつは息切れ一つ無い。稽古の時から薄々感じていた実力の差が、明確に分かった気がした。

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作者名:小石 | 作成日時:2020年7月24日 2時

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