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九十三話 ページ19

蓮side


鎹鴉に起こされ渡されたものは、Aからの文だった。


弟の(えにし)と違い、Aは自分から他人に文を出すことは滅多に無い。あるとしたら、何かどうしても報告したいことがあったときくらいである。


文の内容を読んでみると、"始まりの呼吸の子孫である双子を預かることになった。"と書いてあった。


始まりの呼吸か……確か、日の呼吸だったか?子孫いたんだな…まぁ、Aの所にいるなら立派な剣士になるのだろう。


他には、"元鳴柱・桑島慈悟郎殿の弟子である獪岳と善逸という子供に稽古をつけた"とも書いてあったな。



蓮「獪岳…?……あぁ、悲鳴嶼さんのとこに居た奴か、懐かしいなぁ、元気そうでなによりだ」



近々俺も会いに行こうかな。文によると人生相談もされたみたいだし。思えば、桑島さんの所に預けるだけ預けて、それ以降顔見せてなかったからなぁ……



蓮「…もう8年になるんだよな。退役してからは6年か。時の流れっつぅのは早ぇな……」



俺が獪岳や悲鳴嶼さんに会ったのが13歳の時、

鬼殺隊辞めたのは15の時だからな。



蓮「…あと9年か……時間があるのか無いのか分かんねぇな。まぁ考えても仕方ねぇけど」



ガラッ


考え事をしていると、俺の部屋の扉が急に開いた。



縁「おい兄貴!いつまで寝て……って、起きてんじゃねぇか」



怒りながら入ってきた弟は、既に起きている俺を見て驚いているようだった。失礼な。



蓮「おぉ縁、おはよ」


縁「"おはよ"じゃねぇもう昼だ。つか何持ってんだ?文か?」


蓮「あぁ、Aからだ。また子供を保護したみたいだぞ」


縁「へぇー、ホントに彼奴に似せてきてるな。まぁどう足掻いてもAは彼奴にはなれねぇけど」



「昼飯出来たぞ」と言って部屋を出ていく弟を見ながら、俺は昔を思い出す。



無自覚に相手を煽るAと喧嘩(物理)をする弟、


その弟を面倒くさそうに、でも無表情で相手をするA、


その二人を見て爆笑する俺と、



ーーー二人の間に入り治めようとする、麗


あの頃は、地獄のような日々だった。でも、4人でいる時はすげぇ幸せで、麗といる時は穢れた自分達のことを忘れられた。




……俺はあと9年後、つまり30歳になる前に死ぬ。


病気とか、そんなんじゃねぇけど……だからその前に、Aを助けてやりたい。


それがあの時、A達に背を向けてしまった俺の、せめてもの贖罪だ。

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作者名:小石 | 作成日時:2020年7月24日 2時

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