八十六話 ページ11
獪「そう言うアンタこそ、こんな時間から鍛錬してんのかよ」
『あぁ、任務帰りだからな。任務終わってすぐ寝る、なんてことが出来ないんだよ私は。多少体力を使ってからじゃないと、休めない体質なんだ』
獪「……任務帰り?アンタ、任務行ってたのかよ」
確かにこの数日間、夜の間に此奴の姿は見たことがなかったが……任務に行ってたのか。
『ま、私は一応柱だしな。他の隊員より任務は多い』
獪「疲れたりしねぇのか」
『そりゃあ疲れる時もあるが……今更だしな』
獪「そうか…」
柱……つまり此奴は、他から強さを認められた、っていうことだよな……
『……何か、悩み事か?』
獪「っ、」
『言いたくなければいいが…』
そうだ……言って何になる……
そう思っていても、俺の口は勝手に動き出した。
獪「……俺は…雷の呼吸の、壱ノ型だけが使えねぇんだ」
『壱ノ型…というと、"霹靂一閃"、だったか?』
獪「あぁ……他の型は問題無く使える。でも、壱ノ型だけどれだけやっても使えねぇ…あのカスですら、壱ノ型だけは使えるってのに……」
あのカスが俺より優れてるなんて考えられねぇが、俺が使えねぇ型をアイツは使えるってのが気に食わねぇ…
『成程な…壱ノ型は、どの呼吸においても基本中の基本。それが出来てないから、他が出来ても腑に落ちない……ってとこか?』
獪「それだけじゃねぇ。あのカスが来てから、先生はアイツに時間を割くようになった。
元柱の先生から稽古つけてもらってるってのに、あのカスは泣いたり逃げたりばっかで……でも先生はアイツを連れ戻すのを辞めねぇ」
壱ノ型を使えるアイツの方が可愛いのか……
『……ハァ…』
俺が話終えると、豪柱は呆れた様にため息をついた。
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作者名:小石 | 作成日時:2020年7月24日 2時