夜兎族最強の子が大正時代に行った件について 其ノ二

？？？話 ページ2

？？side


──夢を見た。


内容はあまり覚えていないけれど、でも……


とても、とても悲しい夢。


その夢に出てくる私は、今より少し小さくて、
でも性格は今と正反対。明るい子だ。


夢ではいつも、私は誰かと笑っている。


夢では皆が、私に優しい。親も友達も、皆。



──｢凄くいい夢だなぁ｣



なんて、最初は思っていたけれど


日に日に夢の内容は急激に変わる。


私は誰かに突き飛ばされて、殴られそうになる。


……でも、そこにいつも助けに来てくれる女の子がいるんだ。


その子は、私を突き飛ばした人たちを蹴り飛ばしたり、意識が無くなるまで殴っていたりする。


そして、その子は何も言わずに去っていくんだ。



──｢まるで正義の味方だよね｣



その後の夢でも、何度かその子を見かけたけれど、私と話そうとせず、表情がピクリとも動かない。


でも、私が危険な目に遭うと必ず助けてくれるんだ。


そして、一度だけ、その子が私に言葉を発したことがある。


……その言葉は、絶対に忘れない。



──？｢君が助けを求めれば、僕は全てを放棄してでも、君を助けに行く。君が笑って、幸せに生きてさえいるのなら、僕はそれ以上は望まない｣



その言葉を言われた時、凄く嬉しかった。でも、同時に凄く悲しかったの。


だって、つまりその子は、自分の事はどうでもいいと思ってるのと同じだもん。


私は、その子にこそ幸せになって欲しい。




何年かその夢を見た日、その日の夢は…………



……泣き叫びたくなるほど、辛い夢だった。


夜の暗さがあっても、天気が良く月明かりが照らしている。


辺りを見ると、そこにあるのは、血を流して動かず倒れている人間"だったもの"。


肉片が飛び散っていたり、眼球だけがあったり。


……かく言う私も、動けない一人で。


他の人達のように、酷いことにはなっていない。
でも、動けない。息が出来ない。


……あぁ、あの子が走って来てる。



──？｢─、─！！｣


何か言ってるなぁ。そんな顔、初めて見たな。
でも、そんな悲しそうな顔しないで。私は、あなたの笑った顔が見て見たい……


その時、その子の綺麗な"空色の短い髪"には赤が混じっていて、


"赤い眼"には、涙が溜まっていた。



……初めて"あの人"に出会った時、不思議とこう思ったんだ。




──やっと出逢えた、正義の味方(私のヒーロー)。

リクエスト募集→←設定

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す