1話 -雄英高校- ページ2
｢本日は、晴天なり｣
そんなことを無意識で呟いてしまうほど、今日の天気は素晴らしいものだった。
雲ひとつない青空に、庭に堂々と立っている桜がよく映えている。
春を感じさせるにはとっておきの日であった。そして自分が、今日から雄英高校のヒーロー科に通うという事も。
シワひとつない真新しい制服に身を包み、父がいるであろう、その部屋だけに豪勢に金粉が散りばめられている襖を開ける。
中には煙管を銜えて眉間に皺を寄せている父の姿があった。
｢今日から、雄英生か｣
｢…はい。葬家の名に恥じぬよう誠実で聡明な振る舞いを｣
｢ああ！そういうのはいいよ。A立ちなさい。｣
ゆっくりと立ち上がった僕を見て、父は一言。
｢似合っているよ。頑張ってきなさい。｣
｢！……はい。｣
父の笑顔は今日の朝イチに見た晴天と同じくらい爽やかにキラキラと輝いていた。
我が葬家において、父のような人間は他にいない。皆心をなくした人形のように、感情が著しく低下してしまっている。
『不死身』という個性を代々受け継いできた葬家は政府直属の護衛を家業としてきた。何せ『不死身』なのだ。それはそれは政府にとっては格好の的であろう。死なない護衛なんて、大したものだ。
死んで、蘇る。そんなことを繰り返していたら、やはり普通の人間なら感情が欠落するのは無理もない話だ。
そして僕は、その家業を継ぐべくして雄英高校ヒーロー科に入学を果たした。
とは言っても、葬家の個性は厄介だから、特別枠という────言うなれば雄英高校での僕の保護が目的である。
敵になられたら困る個性だし、何しろ葬家という家の名がある。
｢まぁ、そんなことをグチグチ言っていても意味が無いな｣
あの雄英高校のヒーロー科に通えるんだもの。喜ばないとね。
僕は母が用意してくれた朝ご飯を全て平らげて、机の横に下げてあるサブバッグを手に取る。
｢それじゃあ、行ってきます｣
そう言っても返事を返してはくれない。
いつもの事だが、相変わらず父以外はみんな冷たい。なんだが歪な家族だ。
門番の大男が、玄関から出てきた僕の姿を見て、木造りの大きな、古びた門をギギギ、と音を立てながら開ける。
｢いってらっしゃいませ、坊ちゃん！｣
｢いってきまーす｣
桜並木の中を歩き、雄英高校までの道を着々と進めていく。
僕はふと上を見あげて、朝と同じ言葉を呟いた。
｢うん、本日は晴天なり。｣
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志貴 - とても面白いです！！まだ、Twitterやっているのであればお話しませんか！ (2019年12月29日 1時) (
レス) id: 8ad0ee779a (このIDを非表示/違反報告)
ワーカーホーリック - すごく面白いです！更新待ってます！頑張ってください\(`・∀・´)/ (2018年10月19日 3時) (レス) id: f98b79cb93 (このIDを非表示/違反報告)
アヤ@二次元最高(プロフ) - 初めまして。凄く面白いです。これからも楽しみにしてます！更新頑張って下さい！！ (2018年9月3日 2時) (レス) id: 00ac76cb71 (このIDを非表示/違反報告)
こずめ(プロフ) - 龍雅さん» ありがとうございます！夢主くん褒めて頂いて凄いうれしいです！（ ; ; ）死にすぎて死＝恐怖っていう感情が欠落しちゃってるんですよね…ヒーローに於いてはかなり有利な所ですが笑 (2018年8月29日 19時) (レス) id: 767e3f7071 (このIDを非表示/違反報告)
こずめ(プロフ) - ティッシュはマズイですさん» 中井さん＋顔面殺人鬼はもはやセットでやるしかないと思いました…後悔も反省もしていません！！笑笑 コメントありがとうございます！これからもこの作品を読んで頂けると嬉しいです！ (2018年8月29日 19時) (レス) id: 767e3f7071 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こずめ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/shinkuru101/
作成日時：2018年8月23日 16時
