天啓の乙女と黄金の槍兵

聖杯戦争初日 9 敵襲 ページ31

透き通った白い肌に色素が薄くなったグレーの髪。前髪は右側だけが長くなっている、いわゆるアシンメトリーで、そこから覗く大きな瞳は感情を感じさせない。
とても中性的な容姿だがよく見ると体つきがしっかりしていて胸も無い。男性だという事がわかる。

これ程際立った特徴を持っていれば1度見れば覚えている。今日会ったのが最初だ。しかし、彼はじっとこちらを見ている。

彼は目を動かさず、口元だけ笑った。


ゾッとした瞬間、重い魔力が伝わってきた。

その瞬間、結界が破られた。

「なっ…！？」

「バーサーカー。」

霊体化を解いたサーヴァントが現れ、私に向かって武器を振り下ろす。
終わりだ。死を明確に感じた。

「マスター！」

しかし私にはカルナがいる。カルナは黄金の槍でバーサーカーの武器を受け止めて弾き返した。

「相当の手練だ。サーヴァントも、マスターもな。全力での戦闘を許可して欲しい。」

「いいよ。前に上げた御札を使って。カルナでも、何回かは全力で薙ぎ払えるはず。」

「…感謝する。」

そう言った途端、カルナは駆け出した。速い。咄嗟に強化した眼でも追い切れない。これが、カルナの全力。
魔力放出で強化された移動速度でバーサーカーが振り下ろす武器を避け、捌く。

しかし、バーサーカーもそれに応戦する。大きな叫び声を上げたあと、格段に動きが速くなった。

力任せに振られる武器は速く、危険だと判断したのかカルナは1度距離を取る。バーサーカーは間髪入れずに突っ込んで来る。だが、それはカルナの仕掛けた罠だった。一瞬の隙で魔力を吸い上げ、集結させる。

「梵天よ、地を覆え！！」

カルナの眼から放たれた光線のような物がバーサーカーに直撃する。

うめき声を上げてバーサーカーは怯んだが、すぐに体制を立て直す。確かにカルナの技は効いたはずだが…。よく見るとバーサーカーの傷はついたその場から癒えていく。マスターが魔力を供給しているのだろう。
その事に驚く、だってバーサーカーは魔力消費がとても激しいクラス。並の魔術師ではすぐに干からびてしまう。それをあの青年は口元だけ笑って飄々としている。カルナの言う通り、相当強いマスターなんだろう。

その時青年はふと上を見上げた。
突然の行動に驚いて、私も上を見ると何かがこちらに猛スピードでやってくる。


「…また後で来るね。」

青年はそういい残して踵を返した。
戦う意志がないことをバーサーカーも感知したのか、戦いをやめて霊体化した。

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