天啓の乙女と黄金の槍兵

聖杯戦争前日 10 ページ20

「…はぁ…。どうしてだろう…結界張ったのに…。」

私の結界も並の魔術師に破られるくらい脆かったのか。今まで研鑽してきて得意にしていた結界術だからこそ破られた事が悔しかった。

「…お前の結界術は魔術師の平均レベルを大きく上回る。少なくともオレにはそう見えた。真っ向から破れるとしたらキャスターのサーヴァントしかいないだろう。しかし今回の敵はアサシンだった。マスターの魔術師が余程解呪に優れているか、元より潜伏していたかのどちらかだろう。…いや、さすがに口が過ぎたな。ただの憶測だ。」

そうか、元から潜伏していた可能性もある。さすがカルナだ。目の付け所が違う。

「ううん、多分それで合ってると思う。そうだよね、元から家に隠れていたのかもしれないね。」

聖杯戦争が始まる前から戦いは始まっている。今回の件はそれを私に知らしめた。今後はより気を引き締めて、戦いに挑まなければ。



カルナに見張ってもらって入浴する。
肩まで湯に浸かりながらこれからの事を考えていた。また敵襲があったらどうしよう。カルナと離れている時に襲われたら。守りに入っていて勝てるのか。私は、本当に、生き残れるのか。

「はぁ…」

ため息をつく。
本当に自分の命をかけて戦うことを実感して、怖かった。



寝る前、私はカルナと梅昆布茶を飲みながら話をしていた。

「カルナ、何か変わったことはあった？」

「無いな。魔力の類も感じない。」

首を振るカルナの表情は固い。まだ警戒しているようだ。

「そっか。アサシン達は撤退したのかな。」

「それは断言できん。まだ警戒しておくべきだろう。奴らはアサシンは隙をつくのが生業だ。油断は命取りだぞ。」

その通りだ。本当にカルナはすごい。戦を心得ている。

「そうだね…。引き続き警戒しとこう。そうだ、カルナ。寝る時なんだけど…、一緒に寝ない？」

一緒の布団で寝れば奇襲があっても対応しやすくなる。隣で寝るのとコンマ何秒かしか変わらないがそれでも生存率は高い方がいい。

「！？」

固かったカルナの表情が一気に崩れた。
驚いたように目を見開き、頬は少し赤くなっている。

「それは…同衾という事か…！？しかしお前は若い女性だ、それは…、」

カルナは目を伏せている、まだ頬は赤いままで、もしかしたら照れている。

ん？照れている？どうして？

「あっ」

だって一緒に寝るなんて恋人みたいじゃない…



恥ずかしい。
気づいてしまって私も真っ赤になった。

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