深海の歌 2 【wrwrd!】 (ページ9)

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目が覚めた。いつもの我が家。
トントンさんと別れたあと、泣き疲れて寝てしまったんだろう。まだ頭はぼーっとする。しかし、その中でも一つ、確かなこと。

『夢じゃなかったんだ…』

ひとらん達に会いたくて謡ったあの歌が禁忌だった事。その暴走で人を傷つけた事。そして、向こうの"身体"は無くなった事。
覚めない夢にいるようで、本当の出来事。

トントンさんが堕ちた天使だというのは全く気づかなくてとてもびっくりしたけど、知り合いに会える、というのはとても心強い。気軽にはできないけどね。
"お迎え"のことはトントンさんも知らないようで。でも、危険だからここからはあまり離れないように、とは言われた。

また、いつもの日々に戻るだけ。
あの楽しさを知ってしまったから、それだけなのにとても寂しく感じる。

する事もなく、本を読むか、近くを散歩するかくらいしかやることが無い。

ただ今は…図書館は、行きたくないなぁ。
きっと思い出してしまうから。
何もしなくても、考えちゃうからな…。
そうなるとする事は一つで、早速家を飛び出した。泳ぐのは久しぶりで、冷たい海は考えすぎな頭を冷やしてくれる。

『…うん？』

見慣れた風景、しかしどこか違和感があった。自然と止まって、ぐるりと見渡す。

『なんだろ…音？』

視界じゃない、その違和感はとても低く響く。目を瞑って、その振動を感じる。その向きはよくわからなかったけど、おおよその方向はわかった。近くではない、どこか遠く。気にはなるけど、あまり家から離れたくなかった。

『危ないよね、うん。帰ろう…』

そう自分に言い聞かせて、その日は家に帰った。

どこからか声が聞こえる。誰かが、叫んでいる。

「…らん…ひとらん！」

あぁ、この声は。

『トントンさん…？』

ぼんやりしたまま、声の方へ意識を向ける。そこには。

『…あ、ぁぅ、嘘…』

その惨状は、一言で言えば地獄。崩れ落ちる建物、倒れ伏せる兵士。彼らはみな、我々国の軍服を着ている。
その中で、叫ぶトントンさんの腕の中には。私の知る、白い彼がいた。
…あぁ、いつも白いはずなのに。その服は、赤で染まっている。

「お前Aに会うんやないのか、なぁ！」

彼は、動かない、話さない。

「生き残りがいたぞ、あっちだ！」

「くっそ…！」

いつもより少ない彼らで、知らない軍服の人達と戦っていた。けど、一人、また一人と動かなくなっていく。

そして…