深海の歌 2 【wrwrd!】 (ページ5)

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行ってしまった。でも、なんだか慌ててるようで。

「はぁ！？何言ってんだお前！」

とても大きな怒鳴り声がここまで聞こえてくる。帰ろうとも思ったけど、こういうのは聞いてみたくなってしまうものだ。

「ど、どうしましょう店長…？」

「どうしましょうじゃねぇよ！何がなんでも用意するしかないだろうが！」

「そうは言っても、今は全然あてが無いんですよ？！どこも年齢が高い奴ばっかりで…」

「…しょうがねぇ、少し勿体無い気はするが次期天使長にコネができるのはデカいからな。あの子供を使うぞ」

「えっ、あれを出すんですか？」

「そうだ。他に取られて用意できませんでしたなんて言えねぇんだよこっちは！」

次期、天使長…
僕に関係する話？

「あれって確か、ちょうどここの真下辺りに住んでるんでしたっけ？」

「あぁ、もう親には話つけてあるから準備さえすれば引き取りにいけるだろうよ。けど人魚のくせに"力"が強いらしい、捕まえる時は眠らせてからじゃないと危ねえかもな」

…え？

「へぇ、珍しいですねぇ。厄介な事この上ないですが」

「ほんとだぜ、人魚なんて俺らの糧になるだけの存在なのに面倒くさい事しやがって」

今、なんて…？

「おい、そうと決まればお前はその手配して来い。俺はこっちで準備しとく」

「了解です」

はっと我にかえって、慌ててその場を立ち去る。今聞いた事を頭が理解できない、なんて言った？子供？人魚…？

「はぁ、はぁ…」

家に向かう足取りはどんどん早くなる。早く、早く聞かなきゃ。そうだ、今までずっと気にしてなかった。その答えを聞くのがとてつもなく怖いけど、でも。

「おかえり、ーーーー。ちゃんとお礼言えた？」

いつもの我が家のはずなのに。その日はなぜだか、落ち着かなかった。

『ただいま。ねぇ母さん、聞きたい事あるんだけど…』

それは、単なる勘違い。

『僕の誕生日、さ。お祝いのお肉、出るでしょ？』

そして僕の、思い込み。

「えぇそうよ？とっておきの物を貰ったもの」

普段、肉をあまり食べない天使が珍しく行事としてたくさん食べる"それ"。

『あれって…なんの、肉？』

「何って、決まってるじゃない」

いつも優しい母がこの時だけ恐ろしく見えたのは

きっと、僕のせい。

「人魚の肉よ」