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その声は、上から聞こえた。
『っ…！』
視認するより早く、本能的にヤバいと感じて前へ倒れ込む。私のいた場所には、一本の矢が刺さっていた。角度から見て、あそこか。
城壁の上、よく見おろせる位置。緑色のパーカーの奥で目が合う。彼はとても楽しそうに、口角を上げた。
状況的にとても不利で、どこへ行こうにもあそこを通らないといけない。どうすれば…
「どこ見てんの」
そんな時。聞こえてくるのはいつも
「ゾムの相手は俺でしょ？」
彼の声。
「もう追いついたんかー、はやっ」
「逃げ切れると思った？」
「こんな早いんは予想外やなぁ。でも…その方が楽しめそうやわ」
短剣と刀が甲高い音をたててぶつかる。あの二人は、仲間なのに…
「A！」
後ろからの兵士の声より早く、前方から声がして彼らから目を離す。その先に、トントンさんがいた。
「はよ、こっち！」
手招きされるがままに、そちらへ走る。でも…
『そっちは門と反対じゃ…？！』
「ええから早く！」
姿は見えなくとも、後ろからの声も近い。選択の余地はなかった。トントンさんに向かって走れば、ぐい、と手を引かれる。
「隠し通路あんねん、外へは通じてへんけど門の前まではショートカットできるから」
なるほど。そんなのあるなんて…さすが城。
壁の間の細い隙間を抜けると同時に、トントンさんが足で草をかき分ければ小さな取っ手が見えた。開けると、そこは地下の通路と通じてるようで薄暗い。
「ええか、まっすぐ行ったら突き当りに出るから、そこを左に行くんや。その先に上へ抜けるはしごがあるからそこ登れば、いつもの門の前へ出る。俺はここで足止めしとくから」
それだけ言うと踵をかえすトントンさん。思わず、声をかけた。
『あの、ありがとうございます！それと…ごめんなさい』
その謝罪は、トントンさんの忠告を無視してしまったから。その結果が、これ。
「謝らんといて。悪いのは、俺らやから」
トントンさんは。
どこか、悲しそうに笑った。
「あの状況で言われてもわかりにくかったやろうし…頼むから、逃げて、生きて」
その言葉にこくん、と頷いて、地下へ降りる。明かりの少ない、薄暗い通路。苔の多いそこを、ひたすらに走った。
「ごめんな、こうなる前に止められなくて。まだ間に合うはずや、あいつが来る前にあそこまで行ければ…」
小さく呟いたその声は、私には届かなかった。
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あさぎ(プロフ) - 兎さん» ありがとうございます！そう言って頂けるとなによりです、がんばります！ (2018年5月28日 18時) (
レス) id: 14bed239fb (このIDを非表示/違反報告)
あさぎ(プロフ) - お餅さん» ありがとうございます、wrwrd!の皆さんのかっこよさが引き出せていたなら嬉しいです…！ (2018年5月28日 18時) (レス) id: 14bed239fb (このIDを非表示/違反報告)
兎 - 面白い！更新頑張ってね〜 (2018年5月27日 16時) (レス) id: 35388e6f70 (このIDを非表示/違反報告)
お餅 - 面白いですね！みんなかっこいい...これからも更新頑張ってください！ (2018年5月21日 18時) (レス) id: 8d87a6fb69 (このIDを非表示/違反報告)
あさぎ(プロフ) - CAさん» ありがとうございます！更新ゆっくりで申し訳ないですが、そう言って頂けると、とても励みになります…！ (2018年5月21日 1時) (レス) id: 14bed239fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あさぎ
作成日時：2017年8月30日 18時
