2-2 ページ8
・
私の調べた情報を使って、先生と兄が人を殺したことなら数えきれないほどある。もちろん、私だって人を殺したことはある。
けれど、それは私に暗殺の才能があったというわけではなかった。
私はとても弱かった。
ただ、暗殺を稼業にする兄と師の元で育てられたために、人を殺して生き抜く方法を身につけた。
殺し屋と名乗れるほどの実力も、誇りも私は持ち合わせていなかった。
・
お昼休み、外に出て風に吹かれながらぼーっとしながら空を見上げる。
「──ッ」
すると、殺気を感じた。
反射的に振り返って後ろを確認すると、拍子抜けした。
そこにいたのは、クラスメイトだった。
「あ、驚かせちゃったかな。ごめん」
「潮田……渚くん」
「渚でいいよ」
渚は人畜無害そうな微笑みを浮かべる。
こいつが、あんな殺気を？
気を緩めれば、喉元を引き裂かれそうな、鋭い殺気。兄と先生から滲み出ていたものと同種の殺気だ。
「なにかあったの？」
「えっと、大したことじゃないんだ。自己紹介のとき、名字を言ってなかったことが少し気になって」
「ああ、そのことか」
ずいぶん昔に、生まれたときの名字も名前も捨ててしまった。
偽装した戸籍上の名字はあるけれど、私の本当の名前は、お兄ちゃんが付けてくれた“A”という名前だけだ。
「少し事情があって。名字は知られたくないんだ。気軽にAって呼んで」
「あ……そっか。ごめんね、変なこと聞いて」
「謝られるほどのことじゃないよ」
渚は少し黙りこくって、なにかを言い出そうともじもじする。
「あのさ、Aは殺せんせーについて何か知ってるの？」
「殺せんせー……って先生のこと？」
「うん。Aが殺せんせーのこと見たとき、少しも驚いているように見えなかったから」
「あー、えっと、ごめんね。……たぶん、渚が知っていること以上のことは言えない」
“言えない”。
知っているけれど、言えない。
嘘を吐きたくなかった私の最大限の本音だ。
それを察したのかはわからないけれど、渚は「そっか」と口にして笑った。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 76人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千々(プロフ) - 花游さん» ああ！ 同志が！ 同志がいる！(感涙) とても嬉しいです！ ありがとうございます！ 本当にこの物語は二代目のために書いているようなものなので……最後の最後までぜひぜひお読みいただければと思います！ 絶対に後悔させませんので！ (3月17日 16時) (
レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
花游(プロフ) - 本当に、本当にありがとうございます……二代目さんの夢女なので命が助かります……！！（ ; ; ）応援しております！！ (3月17日 15時) (レス) @page22 id: 4e8b8c9da9 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 棗さん» コメント、モチベになるので本当に嬉しいです！ ありがとうございます！ 続きもぜひぜひ楽しんでいただければと思います！ (3月12日 18時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
棗 - とっても面白かったです！続きを楽しみに待ってますっ((o(´∀｀)o))ﾜｸﾜｸ (3月12日 16時) (レス) @page8 id: d1397bd03f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：千々 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時：2024年3月9日 17時
