33.大人でも、子供でもないまま ページ35
嗅ぎ慣れた匂い。
いつも綺麗な部屋。
このベッドも、椅子も
見慣れている。
それなのに
見なれた彼の姿が
聞き慣れた彼の声が
ないのだ。どこにも。
「あー…。」
ばっかみたい。
なんで泣いちゃってんの。
互いに冷静になれなかった時に
鋭い言葉をぶつけて
あんな雰囲気にしたのは私のせいでしょう。
貴方に話さなきゃいけないことがあった。
やっとまとまったところだった。
大人になろうと思っていた、のに。
でも、もう、全部どうでもいい。
その時、扉が開いた。
「あれ？
なぜリヴァイ兵長のお部屋にAさんが……」
後輩だった。
確かリヴァイ班に入れたい、みたいな話が出てた子だっけ。
なんて言おうかな。
と、考えていると、私の目にたまっていた涙がこぼれた。
そこで後輩はやっと私が泣いていたことに気づいたらしい。
「あっ…えっと、お邪魔してすみません。
リヴァイ兵長のお部屋のお掃除を頼まれたんですけど、後でにしますね。じゃあ僕はこれで……」
そう言って後ろを向いた後輩くん
の、手を掴んだ。
「ねぇ、待って。」
そして、力を少し込めて、引き寄せる。
「なん、ですか。」
後輩くんの声が詰まる。
「私…兵長と、仲、よかったの。」
「…知ってます。」
「凄く、寂しくて…。
君はそんな私のこと、可哀想だと思ってくれる？」
彼は、下を向いたまま。
「ねぇ、慰めてよ…
嫌なら、今のうちに拒否して？」
彼の唇に、私の唇を重ねた。
拒否するような動作はとられなかった。
「……目、閉じて。」
────感じない。
罪悪感のようなものなんて、感じるわけがない。
「……。」
無言は、肯定。
閉じられた目。
別に、誰が見ても、もう行っても助からないと見た1人の兵士を助けたために兵長が死んでしまったこととか
兵長が助けたという兵士が、後輩の女の子だったこととか
髪の長さ、身長、話し方なんかが
私に凄く似ていたとか
そんな話を聞かされたところで
私は何も感じる権利がない。
「せんぱっ…、確か、彼氏いる、って…」
「黙って…。」
うるさい口は口で塞ぐ。
あぁ、これは誰のやり方だったっけ。
私は、誰も選ばない、を選んだ。
まさか、選べるはずもないだろう？
だって、だって私は……
──愛してくれるなら ㅤㅤㅤ誰でもいいの
( そんな、そんなわけないでしょう。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ他でもない、あなたがよかった。 )
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 50人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sunny(プロフ) - ピンクさん» お読みくださりありがとうございます。私の力不足ですね、わかりにくくて本当に申し訳ありません。はっきりとはお伝えできませんが、兵長が夢主に似た兵士を命をかけて守ったことや、兵長の言葉と行動に矛盾があったりすること等から連想していただけると幸いです。 (2018年2月3日 20時) (
レス) id: 24dfe7cde6 (このIDを非表示/違反報告)
ピンク - つまり兵長は主人公が好きだったのですか？私には少し難しかったです…すみません。m(_ _)m (2018年2月3日 15時) (レス) id: c94fb3766b (このIDを非表示/違反報告)
sunny(プロフ) - 詩羽乃♪さん» いつもお優しいコメントありがとうございます！最終話はすごく時間をかけて考えたのでそう言って頂けて感動です…ここまでお付き合い頂きありがとうございました！！ (2017年7月29日 12時) (レス) id: 24dfe7cde6 (このIDを非表示/違反報告)
詩羽乃♪(プロフ) - 完結おめでとうございます！最終話の最後の文章が何かもう……。確かに綺麗な人はいなかったけど、それでもこんな風に終わらせられるなんて凄いです。お疲れ様でした！ (2017年7月29日 10時) (レス) id: 6f1d4dc9c1 (このIDを非表示/違反報告)
琳空(プロフ) - 教えてくれてありがとう!!!早速調べてみる！ (2017年7月10日 1時) (レス) id: 8e29d846ed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sunny | 作成日時：2017年6月8日 23時
