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「……晴れるといいね」
「…………」
“雪が溶けたら何になると思う?”
“私は水……かな。
雪が解けた水は、その後太陽の光を浴びて
植物の栄養になって、新しい花が咲く。
そうやって、暖かいものに
芽吹いていくと思う……”
「……そうだな」
*********
「さて……用事も済んだし。どこかへ遊びに行く?」
「……帰って仕事」
用事を済ませ、デートのお誘いをしてみたものの、相手は帽子を被り直すとクールにそう言った。
相変わらずの対応に、思わず苦笑いを浮かべる。
「真面目だねぇ……」
「紫呉は明日見送りに行くんだから、今日の内に出来ることをやっておかなきゃ」
「
「……行かない。いいんだ。だって、会いたいと思ったらいつでも、会いに行くから」
あの頃よりも伸びた髪が、風を受けてさらりと流れる。
その風貌は、すっかり女性らしくなった。
それは、心だけではない。
「……ちなみにその時って、僕も付き合わされるんですか?」
ふんわりと笑うその表情は、もうすっかり一人の女性で。
紫呉は適わないという風に笑って、帽子越しにその頭を撫でた。
「……狡いなぁ」
“おかえりなさい、紫呉さん”
“私、頑張ります”
“慊人さん。私と、お友達になってください”
**********
掃除も終わり、食事が済むと、Aは縁側に座りお茶を飲んでいた。
先程までは夾もいたのだが、今は席を外している。
すると、Aの隣に誰かが座った。
顔見ずとも正体が分かっているAは、ふんわりと笑って隣を見た。
「Aちゃん」
「透」
「お部屋、すっかり綺麗になりましたね!」
「うん」
「……とうとう、明日なんですね」
「うん」
二人の間を、ふわりと風が入り込む。
目を閉じると、木々が揺れる音や鳥のさえずりが聞こえ、心が落ち着くのが分かる。
「透……」
「はい?」
「あ、あの……えっと……」
どこか恥ずかしそうに俯くAに、透は首を傾げた。
しばらくそのままもじもじとしていたが、やがてAは意を決したように顔を上げた。
「だ……」
「だ?」
「抱きついても……いい?」
思いがけない言葉にきょとんとした透だったが、やがてふわりと笑って手を広げた。
「もちろんです!」
「っ」
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キララ(プロフ) - こんなに感度して涙を流した小説は初めてでした。最後まで読むことができて本当に幸せです。こんなに素晴らしい作品を作ってくれてありがとうございます。 (2022年3月1日 19時) (レス) @page11 id: 48658bd7a3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆえ(プロフ) - ずっと読んでいた作品が終わって寂しいけれど最後まで読むことが出来た嬉しさもいっぱいです。素敵な作品をありがとうございました。 (2021年10月10日 23時) (レス) @page11 id: 5f18ccb9ca (このIDを非表示/違反報告)
さく(プロフ) - とても感動しました!素晴らしい作品ありがとうございます (2021年10月1日 15時) (レス) @page11 id: 033f171bb4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちゃ(プロフ) - 何度目だろう。何度読んでも泣いちゃう。 (2021年9月6日 1時) (レス) id: c09c5cb353 (このIDを非表示/違反報告)
れもんくん(プロフ) - 今はゆっくり休んで下さい!!お疲れ様でした! (2021年6月21日 17時) (レス) id: 2332991ea0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:言ノ葉 | 作者ホームページ:https://twitter.com/ShinyStars1029?s=09
作成日時:2021年5月30日 23時