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「「……………………」」
「ご、ごめんなさい……っ」
「……お前って変なところで変に照れるよなぁ……」
良い雰囲気にやんわりと入ってきた空腹の音。
その犯人であるAは、一気に顔を赤くして夾に背中を向けた。
いつもならこれ以上にこっちが照れるくらいのことを言うくせに、些細な事で恥ずかしくなる。そんなAが可愛くて、夾は思わず吹き出す。
「じゃあ、とりあえず軽くなんか食うか!」
「う、うん……っ」
*******
「そうだ、コレ渡しておくね」
「……?」
真知の家を訪れていた由希は、一本の鍵を差し出した。それを真知は不思議そうに眺める。
「俺の新居の鍵。来たい時はいつでもおいで。向こうで浮気するとか心配されたら嫌だからね」
「そ……っ、そんなこと、別に……思わない……」
照れくさそうにそういった真知。由希はそれを笑顔で見ると、唐突に立ち上がりベランダを開けた。
そして腕を振りかぶり鍵を外に向かって投げ……。
「嘘!!!」
……ようとするのを真知は慌てて阻止した。
まぁ振りだったので由希自身本気ではなかったけれど。
改めて真知に鍵を差し出すも、握りしめたまま開こうとしないので、必死にこじ開けようと奮闘するの真知を、由希はなんとも楽しそうに見ている。
「人間、素直が一番だよね」
「……ヤな奴……っ。ヤな奴そのものです……っ」
そんなこんなでなんとか由希から鍵を取り返した真知は、それを大事そうに両手で握りしめる。
「……あの、でも出発はもう少し先……ですよね?」
「うん。俺はね。
明日……出発するのは……」
外から入る風が、ふわりと二人を包み込む。
真知は由希の横顔を見ながら、その表情で明日旅立つであろう人が誰なのか、分かった気がした。
「……さびしいですか?」
「……ん?……うん。それは……もちろん」
「……私、も。私もさびしい。由希先輩と、こうして簡単には会えなくなってしまうこと。
だから、追いかける。絶対……追いかける……っ」
ほんの少し涙を滲ませながらそういった真知に、由希は愛しさを募らせながらその頬に触れた。
「……うん。待ってる……」
生きる環境が、変わっていく。それはA達や、由希だけではない。
草摩の人達も、これから新しい人生を少しずつ歩んでいく。
特に、十二支の呪いから開放された人達。
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キララ(プロフ) - こんなに感度して涙を流した小説は初めてでした。最後まで読むことができて本当に幸せです。こんなに素晴らしい作品を作ってくれてありがとうございます。 (2022年3月1日 19時) (レス) @page11 id: 48658bd7a3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆえ(プロフ) - ずっと読んでいた作品が終わって寂しいけれど最後まで読むことが出来た嬉しさもいっぱいです。素敵な作品をありがとうございました。 (2021年10月10日 23時) (レス) @page11 id: 5f18ccb9ca (このIDを非表示/違反報告)
さく(プロフ) - とても感動しました!素晴らしい作品ありがとうございます (2021年10月1日 15時) (レス) @page11 id: 033f171bb4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちゃ(プロフ) - 何度目だろう。何度読んでも泣いちゃう。 (2021年9月6日 1時) (レス) id: c09c5cb353 (このIDを非表示/違反報告)
れもんくん(プロフ) - 今はゆっくり休んで下さい!!お疲れ様でした! (2021年6月21日 17時) (レス) id: 2332991ea0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:言ノ葉 | 作者ホームページ:https://twitter.com/ShinyStars1029?s=09
作成日時:2021年5月30日 23時