第１１０話｢奪われたくない……っ！｣ ページ38
｢あ……っ師範！！｣
突然バタバタと慌てた様子で走ってきた楽羅｡
部屋に入ろうとした藉真よりも先に隠れるように部屋に入ったのを見て､藉真はおやおやと笑う｡
｢かくれんぼかい？楽羅｣
｢シィーっ！！｣
まるで誰かに追われてるような楽羅に藉真が首を傾げていると､向かいからとたとたと軽い足音が聞こえてくる｡
｢藉真さん｡こんにちは｡お邪魔しています｣
｢ああ｡いらっしゃいAさん｡依鈴に会いに来てくださったんですか？｣
｢はい｡邦光さんが通してくれて｡いつものお部屋ですか？｣
｢ええ｡いらっしゃいますよ｡ゆっくりしていって下さい｣
快く迎えてくれた藉真にAがぺこりと頭を下げ､顔を上げた時､襖からひょこっと楽羅の頭が見えているのが見えたが､Aは寂しそうに俯く｡
そしてもう一度藉真にお礼を言うと依鈴の部屋へと歩いていった｡
｢…………それで？ケンカでもして､会いたくないのかな？｣
｢……そんな単純なコトじゃないですもん……｣
楽羅は不貞腐れたような顔をして手をぎゅっと握る｡夾との事があってから､Aに会うことが気まずい｡Aはあの時のことを知らないし､楽羅が勝手に気まずさを感じているだけなのたが｡
｢どんな顔して会えばいいのか分かんないし､そんなすぐにわりきれないしっ！顔､絶対歪むもん！絶対“負けた”気持ちになるもん！！
そういう自分を認識するのが一番やなんだもォォん！！！｣
｢そうか｡それは複雑だね｣
ガスガスガスガスと楽羅が襖に鉄拳を食らわせている音が聞こえるも､流石慣れているのか藉真は気にしていないようだ｡
そうしている間も襖の潰れる音と楽羅の愚痴が漏れる｡
｢さっさと夾君とくっついてくれればまたふんぎりもつくのにィィ！！｣
｢………………｣
ふと思い浮かべるのは､彼女が初めて｢呪いを解きたい｣と相談しに来た時のこと｡
｢……彼女はやはり夾を……｣
｢やはりも何も絶対そうに決まってます！！少なくとも夾君は絶対にAちゃんを好きです！！言わせないでぇぇぇぇ！！｣
悔しそうにそう叫んだ楽羅(ちなみにこの間も襖を殴り続けている)だったが､どこか浮かない顔をしている藉真を見て手を止めた｡
｢師範……嬉しくないんですか？Aちゃん推進派だと思ってたのに｣
｢はは｡なんだい“推進派”というのは｡
……心配になるだけだよ｡歳だね｡
……夾も一人の“人間”として好いてくれているだろうかと｡
同情でも､憐れみでもなく……｣
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言ノ葉(プロフ) - hymaaaaaさん» コメントありがとうございます！！物語も終盤ではありますが､優しく見届けていただけたらと思います(´∀｀*) (2021年4月19日 10時) (
レス) id: ebcac45cbc (このIDを非表示/違反報告)
hymaaaaa(プロフ) - 何回も何回も！星満点付けるほど大好きです！！更新再開ありがとうございます！今後も楽しみにしています！ (2021年4月19日 0時) (レス) id: d0380912b8 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - 再開して頂けてとても嬉しいです！ゆっくり書いて下さい！いつも楽しみにしてます(^^) (2021年4月5日 18時) (レス) id: 320593a939 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：言ノ葉 | 作者ホームページ：https://twitter.com/KotohaJNWEST?s=09
作成日時：2021年4月3日 21時
