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「……全く、お前の兄は大袈裟に騒ぎすぎる」
「そだね……」
はとりに治療してもらいながら、由希は先程の兄の乱れっぷりに苦笑した。
「……傷自体は深くないが、念の為病院で検査を受けた方がいい。頭を強く打ってるかもしれない」
「うん、ありがとう」
「いや……直ぐに仲裁に入れなくて済まなかった」
「いいよそんなの。慊人だってもっと怒りだしちゃったかもしれないし」
「……慊人に何を言ったんだ?」
「え?別に……ただ“誰かのせいにするのは”って……。
あ……俺……はとりにも謝らないといけなかった。子どもの頃のこと」
幼い頃、由希の記憶を消したこと。それははとりにとって、紫呉の言葉通り「負い目」になっていたのかもしれない。
「……ごめん。子どもで……。はとりだって傷ついてたのに」
はとりはそんな由希の頭に手を伸ばし、ぐしゃぐしゃと撫でる。
「わ!?」
「俺の事はいい。お前が謝る必要も無い」
「わっ……わっ……いたた……!」
はとりにこんな風に撫でられるのは初めてで、由希は戸惑いつつも大人しく撫でられていた。
やがてはとりの手が離れ顔を上げると、はとりは優しく微笑みながら由希を見る。
「……お前は優しいな。ありがとう」
「…………」
ぱちと瞬きを一つした後、由希は照れくさそうに笑った。
「……兄には似るなよ」
「似ないよ……っ。似れないよっ」
「呼んだかい!?そして治療は完了したかい!?」
「はーくん、お出かけですか?」
紫呉が玄関で靴を履いている潑春に声をかけると、潑春は一度振り返り頷いた。
「由希も大事なかったし……。
「さり気に言うねぇ。藉真殿のとこのリンちゃんに会いに?」
「うん。先生こそ慊人のとこ行かないの?あれからずっと引きこもってるよ?」
「別にいっつも僕がフォローしに行くこともないでしょー。そんな気分でもないし」
「先生ってすっごいムラっ気あるよね、気分に。いっつも」
「そうなの!僕ってムラムラなの!
ま、リンによろしく伝えてよ」
「うん。その前に会話が成立したらね……」
そう言って出かけていく潑春を、紫呉は手を振って見送る。
「慊人もなぁ……。さっさと思い知ればいいのになぁ……」
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言ノ葉(プロフ) - ゆちゃさん» 初めまして。コメントありがとうございます。そんなに喜んで頂けるなんて本当に嬉しいです。改めて再開してよかったなって安心しました。これからもどうか暖かくご支援頂けたら嬉しいです! (2021年3月16日 20時) (レス) id: ebcac45cbc (このIDを非表示/違反報告)
ゆちゃ(プロフ) - 更新ありがとうございます!もう更新されないかと思って残念に思ってましたが久しぶりの更新に悲鳴をあげてしまったほどです。ゆっくりでもいいのでこれからも頑張ってください!だいすきです! (2021年3月15日 0時) (レス) id: d8130fbf1f (このIDを非表示/違反報告)
言ノ葉(プロフ) - ルイちゃんさん» 初めまして。暖かいコメント本当にありがとうございます!!遅れてしまった分、頑張って書き続けたいと思いますので、これからもよろしくお願いします(´∀`*) (2021年3月14日 11時) (レス) id: ebcac45cbc (このIDを非表示/違反報告)
ルイちゃん(プロフ) - 更新がきてとてもとーっても嬉しいです!いつも通知が来ないから見ていたぐらい楽しみに待ってました!フルーツバスケットは本当に大好きでこれを読んだ瞬間涙が出ました。大変だと思いますが、無理なさらず更新をするという事を聞かれて嬉しい限りです! 大好きです! (2021年3月14日 10時) (レス) id: 37d47bd104 (このIDを非表示/違反報告)
ゆちゃ(プロフ) - 更新楽しみにしてます、頑張ってください!!!! (2021年1月15日 19時) (レス) id: 7447c314b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:言ノ葉 | 作者ホームページ:https://twitter.com/KotohaJNWEST?s=09
作成日時:2020年12月7日 20時